15/06/06 09:00:51.69 2DYA/PLc.net
>>576 つづき
抜粋
■「この人が技術のキーマンか」
ドアをノックして中に入ると、既に部屋は10数名の人間で混み合っている。席に座って腕時計に目を走らせる。ちょうど約束の時間の午後1時30分。もうすべてのメンバーがそろったころだろうと踏んで、話を切り出そうとした時だった。
突然、1人の男が扉を開けて足早に駆け込んで来た。最前の苛立ちの表情は、きれいさっぱりぬぐい去られている。男が部屋に入るなり、同席者は立ち上がり波が引くように道を譲った。
「きっと、この人がキーマンだな」。細身の男はこう直感した。名刺を差し出しながらあいさつする。「ACCESSの鎌田と申します」。手渡した名刺にこうある。「ACCESS 取締役副社長 研究開発担当 鎌田富久」。
もう一人の男は不敵な笑顔で名刺を取り出した。「NTTドコモ 移動機技術部 主幹技師 永田清人」。
iモードのひな型を築き上げた2人が初めて顔を合わせた瞬間だった。
鎌田の弁舌はどんどん滑らかになっていく。
「今回は携帯電話機への搭載ということですので、特別な拡張機能も用意しました。『phone to:スキーム』といいます。『phone to:03―XXXX―XXXX』とHTMLを記述すれば、いちいちダイヤル・ボタンを押さなくても、選択ボタンを押すだけで電話をかけられるようになります」
同席者から感嘆の声が漏れる。しかし永田の耳には入らない。そもそも、初めて会って「ウチの製品はこんなに良いモノなんですよ」と売り込む輩にろくな人間はいない。そう永田は常々思っていた。
つづく