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1 天の懲罰
世界の洪水神話にほぼ共通してみられるパターンは、
人間世界の堕落が神の怒りをかい、神が人類を洪水に
よって全滅させ、そのあとわずか生き残った人々が(ア
ジアでは 1 組の兄妹が夫婦となる場合が多い)、人類をも
う一度繁殖させるというものである。洪水発生の原因は、
人間の堕落に対する神からの天罰ということになる。
日本でも古来このような天罰論で災害や異変が説明さ
れてきた。
災いはときの為政者の悪政や不道徳にあり、
社会の退廃、奢侈、腐敗、堕落に対して天が懲罰として
災害をもたらすと考えられたのである。
この考え方は中国儒教の災異思想の影響を受けたもので、
日本においては、奈良時代、聖武天皇の御代で、藤原四子(不比等の
四子:武智麻呂・房前・宇合・麻呂)が 737 年にそろっ
て疫病(天然痘)で死亡したとき、この厄災説がとなえ
られている。
天罰論によれば、天変地異は王権と密接に関連し、政
治の是非や吉凶を占うことができる。民衆からみれば、
災害異変の発生は支配者の政治的倫理性、統治能力が危
機状態への臨界点に達したという判断となり、王権の交
代を求めることができる。
この災異説は、中国では前漢のころ(前 2 世紀後半の
董仲舒)から陰陽説と結びつき、さらにこれに五行説が
結びつくようになった(前 1 世紀頃の劉向)。要するに前
漢になって陰陽五行説で災異が説かれるようになってき
たのである。日本でもその影響を受け、災異は陰陽五行
説で解釈されていく。
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立命館大学 歴史都市防災研究所
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