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>>358
2017年6月25 日
グローバル化とナショナリズム
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(4)平等の実現 連帯意識が必要
九州大学准教授 施光恒
戦後の日本では、自由や平等、民主主義といった理念を前面に掲げるのは、おおむね革新派(左派)でした。
同時に、戦後左派は愛国心や国民意識のようなナショナルなものを嫌い、否定する傾向にありました。
しかし、国民意識や愛国心といったナショナルなものを否定しつつ、自由や平等、民主主義を訴えることは、
実はなかなか両立しません。英語圏の政治理論の一潮流に「リベラル・ナショナリズム」があります。
これは、自由や平等、民主主義といった理念は、ナショナルなものがしっかりしている環境、
つまり安定した国民国家で最もよく実現されると論じるものです。
例えば「平等」という理念を考えてみましょう。平等の実現のためには、現代では福祉(再分配)政策が必要です。
福祉政策は人々の間に強い国民意識がないと実現できません。なぜなら、恵まれた立場にある人々が
自分の利益の一部を断念し、恵まれない人々のために差し出す行為を前提とするからです。
こうした行為は社会に強い連帯意識(仲間意識)が存在しなければうまくいきません。
リベラル・ナショナリズムの政治理論は、平等を実現するには国民の相互扶助意識が大切だと論じます。
逆に言えば、グローバル化が進展し、国民意識が希薄になれば、格差を是正し、平等な社会を実現するのは
困難になると示唆しています。むろん、「EU人意識」や「東アジア人意識」、あるいは「地球市民意識」のような
国境を越えたアイデンティティーが確立されれば別ですが、こうした意識の確立は今後数十年単位ではほぼ無理でしょう。
資本移動の自由化を伴うグローバル化は、格差拡大を招きがちです。同時に、グローバル化で国民意識が希薄化すれば、
再分配政策による格差是正も難しくなります。グローバル化の進展と、平等という理想の実現は