16/08/23 16:01:08.06 CB+gkxqn0.net
今日も男は動画を待ち続ける。
もう一体どれだけの間この部屋に居るのだろうか。
「新作まだかな……」
無意識にリロードを繰り返す。他にやる事は無かった。
いや、やる必要が無かったのだ。
何もしなくても、こちらから要求しなくても毎日ドアの前に食事が用意される。
男はニートだった。
男が見ているページは、ある中年男性が日々の被害妄想を動画で撮影して動画投稿サイトに投稿しているというものだった。
「今日も動画遅すぎだろ……何やってんだよ」
ここ1ヶ月は毎日のように動画が投稿されていた。しかし、最近は投稿が滞り今日に至ってはまだ投稿すらされていない。
男はリロードを諦めて過去の投稿動画を観返す行為に切り替えた。
「ヘイト溜めておかなきゃ……」
中年男性が高校生を追い回す動画、中年男性が当たり屋をする動画、中年男性が自宅に訪問してきた相手に嫌がらせをする動画。
様々な動画を繰り返し視聴する。
昔の動画は良かった。中年男性が積極的に外に出て他人に迷惑をかける。不謹慎ではあるが、男にとってはそれを見るのが一番の楽しみとなっていた。
だが最近の動画ではその積極性が失われ、徐々に動画の投稿頻度も落ちていた。
「イタ電でもしてみるか」
男は電話機を手に取り、ネットに公開されている電話番号を押下した。
「まーた話し中か」
期待は裏切られ、今日も電話は繋がらなかった。
「もう寝たんかな……。俺も寝ておくか」
男はベッドに潜り込む。また一日を無駄にした、そんな後悔から逃げるように。
………………
…………
……
「――ずさん、―し―さん！起きて下さーい。問診の時間ですよー」
白い衣服に身を包んだ女性の声で男は目を覚ました。
「おめえ……なん……なんだぁ？！」
男は自体が飲み込めずに声を荒げた。ニート生活をしている自分の部屋に知らない異性が居たのだ。無理もない。
そんな男を気にも留めず、女は慣れたように男を引き起こした。
「おい、おま……引っ張るなって！どっ、動画観んだよ俺は！新作が上がってるかもしれねーだろ！」
男の主張は通らず、そのまま部屋の外に引きずり出される。部屋とは違い明るく照らされた廊下に思わず目を覆い隠す。
長い廊下を連れられ、別の部屋に入った男の前には、これまた白い衣装に身を包んだ初老の男の姿があった。
「おはようございます、調子はどうですか？何か気になる事あります？」
初老の男は優しい口調で語りかけた。
「何だよこれぇ……何でおめぇ……」
男は頭の処理が追い付かずに混乱する。
「またお忘れになったのですか……私の事は覚えていますか？ご自身の事は？」
初老の男は資料のようなものを観ながら困ったように頭を掻いた。
「なんで？誰だおめえ、俺は―」
男は言葉に詰まった。言葉が出てこなかったのだ。自身を表す言葉が何も出てこない。
「はい、これでちゃんと確認してください」
そう言って初老の男は手鏡を手渡した。そういえば自分の部屋に鏡なんて