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★若者に変化を求めた関口宏の本心はやっぱり「安倍下ろし」だった
田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)
TBS系列のテレビ番組「サンデーモーニング」で、司会の関口宏氏が11日、
いまの若者世代の安倍政権への高支持率を批判的に言及した。
街角での若い人たちへのインタビュー映像を交えながら、関口氏は若い世代がいまの
「安定」よりも「変化」を望むべきではないか、と疑問を呈したわけである。
もちろん、関口氏は若者が就職率の回復をはじめとするいまの経済的安定に
ひかれていることに一定の理解を示してはいるが、結局は彼の言う「変化」というのは、
今の安倍政権を打倒するという「変化」でしかないのだろう。
関口氏のこの「安定」と「変化」論は、「安倍下ろし」という結論ありきの議論であり、
端的にいって政治的なものでしかない。ただ、話をこれで終わりにするのはあまりに
もったいないので、もう少しこの関口氏に代表される「安定」と「変化」とはそもそも
何かを経済学的な視点も交えて考えてみたい。
結論だけ先に書くと、経済が安定的だからといって、若者の気持ちまで安定的で
あるわけはない。関口氏のいうように「安定をずっと安定かと思ってたら、
眠りに入っちゃう」とはいえないのだ。
むしろ経済学の研究成果では、経済が不安定なほうが、若者の心は「安定」志向に
なってしまうようだ。関口氏の発言は、あまりに若者の心の行方を断定し、その変化と
躍動の可能性を軽視している。
例えば、大恐慌期を経験した世代は、経験しなかった世代に比べてリスク回避的な
傾向が強いという実証分析もある(ウルリケ・マルメンディア&ステファン・ネーゲル
「不況ベイビー:マクロ経済の経験はリスク行動に影響するか?」)。つまり「変化」に
伴うリスクを避ける傾向が、不況を経験した世代の方が強く出るというのだ。
カリフォルニア大ロサンゼルス校経済学部准教授のパオラ・ジュリアーノと、
国際通貨基金(IMF)アシスタントディレクターのアントニオ・スピリンベルゴの研究
「経済危機の長期持続的な諸効果」には、さらに興味深い研究の要旨がまとめられている。
たとえば、景気の良し悪しのようなマクロ経済的な環境が、若い世代に影響を及ぼすのは
「人格形成期」の18歳から24歳までで、それ以降はそれほど強い影響を与えないという。
今の安倍政権が発足したのは2012年の終わり(実際には同年の自民党総裁選で
安倍氏が勝利してから株価などは大きく変化している)からであり、そのときに18歳だった
人たちは23歳になっている。24歳だった人たちは30歳近い。いま現在の18歳から30歳
ぐらいまでは、アベノミクスの影響下にあるのかもしれない。
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