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★北朝鮮・シリアの化学兵器コネクション
2017年4月21日(金)12時10分
李英和(関西大学教授)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載
去る4月4日、シリアのアサド政権が自国民に向けて化学兵器による攻撃を行った。
毒ガスの種類は猛毒の神経ガス、サリンとみられる。この毒ガス攻撃では子供31人を
含む88人が死亡する大惨事となった。
世界中がアサド政権の蛮行に衝撃を受ける中、そのわずか2日後にさらなる衝撃が走った。
アサド政権による化学兵器使用を理由に、米軍が巡航ミサイルによりシリアの空軍基地を
爆撃したのである。それも米フロリダ州でのトランプ米大統領と中国の習近平国家主席
による首脳会談の最中だった。
米中首脳会談の主要議題の一つは北朝鮮の核ミサイル問題だった。それだけに、
今回の米軍によるシリア爆撃の「真意」について、北朝鮮問題に絡めて大いに臆測を呼んだ。
トランプ政権がシリア空爆を通じて北朝鮮の金正恩政権を強くけん制する「政治的メッセージ」
を送ったという見方が、専門家やメディアの間で大勢を占めている。
■核・化学兵器の双方を開発
私見では、このような見立ては半分正解、半分間違いだ。確かに、北朝鮮へのけん制ではある。
だが「間接的」なけん制ではなく、もっと「直接的」な警告が込められている。
端的に言えば、今回のアサド政権軍による化学兵器使用は、北朝鮮軍の「代理実験」
である疑惑が色濃い。そうだとすれば、アサド大統領と金正恩党委員長は非人道的犯罪の
「共謀共同正犯」ということになる。
北朝鮮は化学兵器禁止条約(CWC)に加盟していない。現在、未加盟国は北朝鮮に加え
イスラエル、エジプト、南スーダンの4カ国だけだ。未加盟であること自体が化学兵器の保有を
強く疑わせる。それでも北朝鮮は化学兵器の保有を否定するが、北朝鮮の言い分を信じる
専門家はほとんどいない。この点については、脱北者の証言にも事欠かない。
これには北朝鮮軍で化学兵器を扱った経験のある筆者のいとこの証言も含まれる。
北朝鮮は現在、約5000トンの化学兵器を保有する。北朝鮮は「東方の核強国」を
自称しているが、同時に文句なしの「東方の毒ガス大国」だ。
化学兵器は「貧者の核兵器」とも呼ばれる。貧しい国は核ミサイル開発の技術と資金を持たない。
その代わりに、悪魔に魂を売り渡しさえすれば、比較的容易に持てる大量殺りくの手段が
化学兵器だ。ところが、北朝鮮は20年以上も前から核兵器開発に成功している。
それにもかかわらず「つなぎ役」の化学兵器を廃棄せず、後生大事に今も隠し持つ。
金正恩政権は核兵器と化学兵器の大量破壊兵器「二刀流」を使う構えのようだ。
以下では、その北朝鮮とシリアの化学兵器をめぐる「根深い関係」を見る。
その際、歴史的経緯をごく簡単に確認した上で、最近2年間ほどの動向に焦点を当てる。
URLリンク(www.newsweekjapan.jp)
■40年にわたる密接な軍事協力関係
北朝鮮とシリアの軍事協力関係を要点だけ記せば次の通りである。
北朝鮮は1966年7月2日にシリアと外交関係を樹立した。
その後、73年に第4次中東戦争が勃発するや、北朝鮮はシリアに積極的な軍事的支援を行った。
この時には、戦闘機のパイロット30人、戦車兵200人、ミサイル要員300人をシリアに派遣している。
北朝鮮とシリアはその後も40年間以上の長きにわたって緊密な軍事協力関係を維持してきた。
この点は専門家の間では常識となっている。
例えば、米国防情報局(DIA)の元情報分析官、ブルース・ベクトル氏は、著書『金正日最期の日々』
(原題 The Last Days of Kim Jong-il,2013)で、次のような事実を明かしている。
北朝鮮が90年代初頭からシリアに化学兵器を販売してきたし、90年代中盤には二つの
化学兵器製造施設の設計・建設を支援した。
問題なのは「現状」だ。シリアは13年、CWCに加盟した。そのシリア政府は、化学兵器禁止機関
(OPCW)に申告した保有量(約1300トン)を既に全廃したことになっている。これを根拠に、
アサド政権は今回の毒ガス使用を「100%でっち上げ」と居直る。だが、欧米やトルコはアサド
政権軍の犯行とほぼ断定している。 (以下リンク先で読んでください)
URLリンク(www.newsweekjapan.jp)