17/04/21 11:54:51.77
★トルコの国民投票結果がドイツにもたらした「二重のショック」
敵の味方は実は「ドイツ人」だった?
川口 マーン 惠美作家
4月16日、トルコで国民投票があり、トルコの大統領権限の強化が過半数で承認された。
エルドアン大統領が精魂傾けていた懸案だ。
ドイツでは、エルドアン大統領は「独裁者」ということで、蛇蝎のごとく憎まれている。
最近は、ドイツ−トルコ政府間の関係もよくない。ところが今回の投票では、
さしあたってエルドアン大統領の権限強化が決定したわけで、以来、ドイツメディアは
上を下への大騒ぎになっている。
エルドアン大統領の支持者は、トルコの田舎に多い。つまり今回の改憲案も、
伝統を重んじる田舎の「イエス」票で力強く支えられた。イスタンブール、アンカラ、
イズミールの3大都市は進歩的であるため、反エルドアン色が強く、軒並み「ノー」票が上回った。
ところが、4番目に大きいトルコ人の票田では、エルドアンの明確な勝利となった。
それはどこか? 実は、ドイツなのである。
ドイツには、トルコ系の人が300万人住んでおり、うち145万人がトルコでの参政権を持っている。
今回投票したのはその約半分の70万人だったというが、そのうちの63%がエルドアン大統領に
「イエス」票を投じた。
トルコでの「イエス」票は51.4%だったから、ドイツでのエルドアン支持率は、
トルコ本国以上ということになる。
興味深いのは、在独トルコ人会の代表、ソフロー氏のコメント。
「在独トルコ人のエルドアン支持は、彼らのドイツに対しての抗議の表明である」
何に対する抗議か? 在独トルコ系が差別され、疎外され続けてきたことへの抗議だという。
もし、これが真実なら、ドイツの50年余にわたる移民政策は、完全に失敗したというしかない。
ドイツ人は頭を抱えている。
おそらく多くのトルコ系移民は、必ずしも、エルドアン大統領のしていることが正しいとは思っていない。
ただ、ドイツ人がトルコの政治を批判し、エルドアンを独裁者と弾劾するのを見れば、
当然、自分たちが攻撃されているように感じる。人間は皆、外国に住むと愛国者になるものだ。
だから、たとえエルドアン政権に疑問を感じていたとしても、ドイツ人のトルコ批判に加わることは
感情的に難しい。そうするうちに、ドイツ人に対して、「お前たちに何の関係がある?」という
反感が生まれたとしても無理はない。
そんなモヤモヤしたところに、エルドアン大統領が登場し、勢いよくドイツを攻撃し、
移民の心のモヤモヤを発散させてくれた。
トルコ人としてのアイデンティティはリフレッシュされ、長年の鬱憤も晴れた。
そのうえ、彼らがドイツでは見出すことのできなかった心地よい「故郷」まで感じる
ことができたに違いない。こうなると、エルドアン支持は自然な流れだ。
確かに、国籍もドイツで、自分ではすっかりドイツ人のつもりなのに、容貌のせいで、
ドイツ人からトルコ人扱いされる人は少なくない。ドイツでは、トルコ人に対する差別
感情はまだまだ根強い。トルコ人としてのアイデンティティもなく、おまけにドイツ人からも
阻害されたら、当然、憂鬱な気分になるはずだ。
私はこれまで、日本は厄介な隣国に囲まれて苦労が多いと思っていたが、
気がつくと、ドイツも昨今、敵意を持つ隣国に悩まされ始めた。現在、その最先鋒がトルコだ。
ドイツと日本は、軍事力を行使せず話し合いや技術・経済援助で他国との問題の
解決を図ろうとするところがよく似ている。だからこそ、今後、ドイツがトルコにどう対応
していくかは、まことに興味深い。(抜粋、全文はリンク先へ)
URLリンク(gendai.ismedia.jp)