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★トランプとプーチンの「蜜月」はなぜ急に失速したか
米露関係を左右するいくつかのトゲ
小泉 悠未来工学研究所・客員研究員
「私はプーチンととても、とてもよい関係を結べるだろうと思う。そして私はロシアととても、
とてもよい関係を持てるだろうとも思う」
これは大統領選の期間中にトランプ候補(当時)が行った発言の一つである。
これに限らずトランプ氏は対外政策に関して様々な発言を行ったが、
それらをロシア側が好意的に受け止めたことは疑いないだろう。
たとえばトランプ候補の大統領当選が明らかになった翌日の2016年11月10日、
ロシアの国営宣伝メディアである「スプートニク」は、トランプ候補が選挙期間中に
行った外交政策に関する長大な発言集を掲載した。
当然、そこで抜粋されたものはロシアにとって都合の良いものが主であるが、
それゆえにロシアがトランプ政権のどこに期待していたのかを知る手がかりとなる。
その一部をさらに抜き出してみよう。
「私はプーチンのことは知らないし、そのことを特に気にしてもいない。
だが、米国がロシアとうまくやることができ、ISIS問題で協力できるならグレートだと思う」
「我が政権はISISを打倒し、イスラム過激派のテロリズムを阻止するために我々と
パートナーシップを結ぼうと望むいかなる国とも協調する。そして、そこにはロシアも含まれる。
もし彼らが我々の側でISISをノックアウトしようと望むなら、それはただよいことだ」
「アサドは悪い奴だ。(中略)だが彼ら(反体制派)がアサドを倒せば(中略)アサドよりも悪いことになるだろう」
「言わせてもらうが、ドイツはなぜウクライナ問題に関してNATOに働きかけないのだ?
なぜウクライナの近隣諸国が対処せず、ロシアとの第三次世界大戦の危険を冒して
我々がいつも音頭をとらないといけないのだ?」
「私が聞いたところでは、クリミアの人々は元居た場所よりもロシアに近しいということだ。
そのことを直視しなければならない」
これらの発言はたしかにロシアにとって極めて都合のよいものであった。中東においては
対ISIS作戦でロシアとの協調を示唆し、ウクライナ問題については米国の関与に消極的で
あるように見えるためである。
シリアとウクライナに対するロシアの介入がオバマ政権後期における米露関係の棘であった
ことを考えれば、トランプ政権の成立によって米露関係が協調に転じるだろうとの見通しを
抱くのは自然であろう。
さらに、ロシアとの石油ビジネスの経験が長く対露制裁に批判的なティラーソン氏
(元エクソンモービル会長)が国務長官に、ロシアとの関係が深いとされるフリン氏
(元国防情報局(DIA)長官)が安全保障担当補佐官に任命されたことも、
こうした見通しに拍車を掛けた。
URLリンク(gendai.ismedia.jp)
■なぜ「米露蜜月」は失速したか
しかし、現実には「米露蜜月」の見通しは急速にしぼんでいった。
国防長官に任命された海兵隊出身のマティス氏はその就任演説において、
ロシアは「NATOを破壊しようとしている」と発言したほか、親露的とみられた
ティラーソン氏さえ「ロシアの台頭と拡大に危機感」を持たなければならないと述べた。
さらに親露派人脈の代表格と見られたフリン補佐官は、選挙期間中にロシア大使と
不適切な接触を行った上にその事実を正しく報告しなかったとして辞任に追い込まれ、
後任には対露強硬派のマクマスター氏(陸軍出身)が就任。
国家安全保障会議のロシア担当上級部長となるヒル氏(ブルッキングス研究所出身)や
駐露大使のポストに就くハンツマン氏(ユタ州知事出身)も総じてロシアに対しては警戒的な姿勢で知られる。
「親露派の多いトランプ政権」というイメージは、名実ともに急速に変化しつつあるのが現状だ。
トランプ大統領自身についても、大統領選挙でロシアと「連携」したとの疑い
(いわゆる「ロシア・ゲート」)でFBIが調査に乗り出すなど、ロシアは鬼門となりつつあり、
容易にロシア接近を図ることは難しい情勢である。
筆者はトランプ政権の成立によって短期的には米露関係が改善しても、
中長期的には米露のすれ違いが前景化するのではないかとの見通しを持っていたが、
それさえ望み薄というのが米露関係の現状であろう。(以下リンク先で読んでください)
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