17/03/28 13:43:50.20
★「日本の汚染食品」告発は誤報、中国官制メディアは基本を怠った
2017年3月27日(月)17時22分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)
<無印食品やイオン、カルビーが名指しされたCCTVの特番『315晩会』は完全な誤報だった。
中国人の間でも反発が広がったが、その背景にあるものとは>
昨年、本欄で「アップルも撃沈させた中国一恐ろしいテレビ特番、今年の被害者は?」
との記事を書いた。「世界消費者権利デー」(毎年3月15日)に放映される、
中国中央電視台(CCTV)の特別番組『315晩会』の紹介だ。
国内外の"悪徳企業"を次から次へとメッタ斬りするという構成で、
槍玉に挙げられた企業が超速で土下座して謝罪するところまでが一連の流れである。
今年は迎撃ミサイルシステム「THAAD」配備に伴う中韓関係悪化を受け、
韓国企業が叩かれるのではとも噂されていたが、意外にも槍玉に挙げられた外資は
日本産食品と米スポーツメーカーのナイキだった。日本産食品に関する報道を簡単に紹介しよう。
2011年の福島第一原発事故を受け、中国政府は福島県や新潟県、栃木県、
東京都など12都県で製造・生産された食品、農作物、飼料の輸入を禁止した。
ところが近年、中国で人気の越境EC(海外商品を購入する電子商取引)では
原産地「日本」とだけ書かれた食品が大量に流通しているではないか。
調べてみると、天津市の保税区倉庫からは栃木工場で製造されたカルビー「フルグラ」が
大量に見つかった。無印良品で販売されている飲料、イオンで販売されているレトルト
ご飯には日本から輸入された商品に中国語のラベルが貼られているが、そのラベルを
剥がすと下に隠されていた日本語の説明には原産地が東京都、新潟県と記されている。
深圳市市場稽査(けいさ)局の初期的調査によると、中国で日本の核汚染食品を
販売している疑いのあるネットショップは1万3000店以上に上るという。この問題について、
深圳市市場稽査局は全面的な対策を実施していく方針だ。
CCTV公式サイト「【315曝光】日本核污染区食品遭热销 奶粉麦片均在列」より
■各社は原産地証明を取得していると反論
悪事を暴いたと意気揚々のCCTVだったが、放送後ほどなくして番組が間違いだらけの
手抜き取材だったことが判明する。
まず12都県からの輸入を禁止という2011年4月8日の通達だが、同年6月13日には山形県、
山梨県を除外した10都県に改訂されている。最も根本的な政府通達を取り違えているわけだ。
また無印良品、イオンはそれぞれ声明を発表。名指しされた商品はいずれも輸入禁止の
10都県以外で生産された商品であり、原産地証明を取得するなど正規の輸入手続きを
経ていることを明らかにした。
ラベルの下から出てきたという日本語表記の製造地表記はCCTVの勘違い。
書かれていたのは本社の住所である。CCTVは基本的な確認を怠ったばかりか、
ろくに日本語を読めるスタッフすら動員していなかったのだ。カルビーも正規ルートでは
10都県以外の工場で製造された商品を輸出しており、原産地証明も取得している
との声明を発表している。
URLリンク(www.newsweekjapan.jp)
中国向け越境ECを手がける株式会社オレンジモールの内田信社長によると、
保税区に日本産食品を持ち込む場合には原産地証明が必須だ。
越境ECに問題のある日本産食品が流通しているとされた今回のケースでは、
(1)輸入業者が原産地証明とは異なる商品を輸入した、(2)税関と癒着していた、
という2通りの可能性が考えられるという。
どのような手口で通関させたのかという具体的な不正を調査するのがメディアの仕事のはずだが、
「危ない食品が出回っている、悪徳企業許すまじ」という煽りだけの報道で終わってしまった。
秘密主義なのに事前に情報が漏れていた
日本産食品の輸入禁止については、福島第一原発事故直後である2011年の規定が
いまだに残っているという問題がある。日本政府は規定変更を求めているが、中国側は
応じていない。中国人の間でも「PM2.5を始めとする環境問題が深刻な中国よりも、
東京の食品が危ないなんてありえない」といった反応が見られる。
それでも規定は規定、日本の大手企業は中国の法的義務を遵守していた。
それを一切取材しないで誤報を垂れ流したCCTVの責任は重い。(以下リンク先で読んでください)
URLリンク(www.newsweekjapan.jp)