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★永住権「安売り」で外国人「高度人材」は集まるのか
出井康博 執筆者:出井康博 2017年2月17日
首都圏の国立大学で教鞭を取るインドネシア人男性(40代)は、1990年代初めに
留学生として来日して以降、ずっと日本で暮らしている。永住権も高度人材の制度が
導入される以前の2005年に取得した。
「永住権を取ると、5年ごとのビザの更新手続きは要らなくなりました。
だけど、その他の利点は、自宅を購入する際のローンが銀行で組めるようになったことくらい」
男性もまた、外国人に短期間で永住権を付与することには否定的だ。
「日本の言葉や文化を覚えた人に限るべきです。いくら優秀でも、1年というのは早すぎる」
高度人材と認められたところでメリットは限られる。「配偶者が制限なく日本で働ける、
配偶者の親を母国から呼び寄せられる、それに家事使用人を帯同できる程度」
(制度に詳しい行政書士)なのだ。永住権の取得にしろ、日本に住み続けていれば
やがて手に入る。そんなこともあって、12年の制度導入から1年半が過ぎても、
認定を受けたのは800人程度に過ぎなかった。
その後、高度人材の誘致を「成長戦略」に掲げる安倍政権が誕生すると、
13年末に年収などの要件がぐっと引き下げられた。さらに15年、それまで「特定活動」
という在留資格の一部に位置づけられていた高度人材に対し、新たに「高度専門職」
という資格もつくられた。
■「高度人材」の65%は中国人
とはいえ、“本物”の高度人材にとって「永住権」の魅力は乏しい。事実、高度人材の
資格を得ていながら日本から去っていく人も少なくない。昨年6月時点で、「高度人材」
もしくは「高度専門職」として日本に滞在する外国人の数は4732人と、10月段階の
認定数「6298人」とは1500人以上の差がある。それほど多くの「高度人材」が4カ月間で
新たに認定されるはずもなく、かなりの人は認定を受けた後、日本を離れているようなのだ。
何より、「高度人材」が多少増えたからといって、景気が上向いたという話も聞かない。
一方、高度人材を国籍別に見ると、圧倒的に多いのが中国人だ。その割合は全体の
65パーセントに上る。安倍政権と中国は、決して相性が良いとは言えない。
その中国出身者が、政権肝いりの制度で最も恩恵を得ているのは皮肉なことである。
高度人材ビザの取得は、一定以上の学歴と年収があったり、また企業経営者の
外国人であれば難しくはない。経営者の場合、大学院卒で職歴が7年以上、
1500万円の年収があれば、日本語能力などなくても手に入る。今後、さらに基準が
引き下げられる可能性もある。そのとき、制度が日本の永住権取得に悪用される危険はないのかどうか。
■実際には「単純労働」に従事
高度人材に限らず、外国人に対する就労ビザの発給基準は最近、大幅に緩んでいる。
たとえば、「技術・人文知識・国際業務」ビザの発給実態がそうだ。同ビザは、技術者や通訳、
もしくは日本の大学を卒業した留学生などが多く利用する。ある意味、高度人材“予備軍”
のビザと言える。
この資格で日本に滞在する外国人は16年6月時点で約15万4000人を数え、12年末から4
万人以上も増えた。そのなかに、ビザの趣旨に反する「単純労働」に従事する外国人が
かなり含まれることは、私の取材経験から断言できる。ホワイトカラーの専門職に就くと
見せかけてビザを取得し、実際には工場などで労働者として働いているのだ。
そんな外国人の単純労働者であろうと、現状の制度のもと日本で10年も働けば、
「高度人材」の認定を受けなくても永住権が申請できる。安倍政権が頑に否定する
「移民」の受け入れが、国民の目の届かないところで、就労ビザを悪用されて進んでいるわけだ。
こうした現状の背景には、単純労働の現場で起きている未曾有の人手不足がある。
外国人が単純労働を目的に入国することは許されない。そこで現場は「実習生」や
「留学生」を受け入れ凌いでいるが、もはや限界に近づきつつある。
政府が今、最も議論すべきなのは、高度人材に何年で永住権を与えるかといった話ではなく、
日本人の働き手が集まらない職種に対し、いかに外国人労働者を供給していくべきなのかという問題なのだ。
(抜粋、全文はリンク先へ)
URLリンク(www.fsight.jp)