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★フジテレビ「池上彰特番」が犯した、残念すぎるレベルの3つのミス
問題は、あのグラフだけじゃなかった…
髙橋 洋一経済学者
■ゴールデン番組でやってはいけないレベル
先週16日(金)、午後8時からフジテレビで3時間の『池上彰緊急スペシャル』という
特番が放送された(URLリンク(www.fujitv.co.jp))。
格差はなぜ世界からなくならないのかという課題を、池上彰氏が解説し、
ゲストのタレントや一般参加者が聞くという番組だ。
真面目な番組ではあったが、ネットでの評判はさんざんだ。
番組内での「アメリカでの格差が最近広がった」という指摘は正しかったものの、
アメリカと比較して、「日本の格差も酷い」という点の指摘がまずかった。
池上氏が「格差」を示すために使った図表が酷いと、ネットで酷評されたのだ。
その表は、以下のとおりだ。番組が2時間くらい進行した時に出てきたものだ。
URLリンク(gendai.ismcdn.jp)
この二つの図は、日本とアメリカで、上位1%と下位90%の平均所得の推移を表したものである。
しかし、一目でわかるが、日本とアメリカで縦軸の目盛りが違っている。
日本では0.8から1.4までであるが、アメリカでは0.5から3.0である。
日本のほうが、アメリカより4倍ほど大きく見せて盛っているのだ。
こうした図のトリックは、子供騙しの典型であるが、まさかテレビのゴールデン番組で見られるとは驚いた。
このデータの出所は、The World Wealth and Income Database(URLリンク(www.wid.world))
であるので、誰でも容易に池上氏の図の間違いを指摘でき、正しい図を作ることができる。
筆者も、昨年初めにピケティ氏が話題になったとき、2015年2月23日付の記事『「ピケティ格差解説」
番組に出たら、出演者がみんな「所得トップ1%に入る年収」だった』を書いたときにこのデータベースを
使ったので、アメリカと目盛りを合わせた正しい図を載せておこう。
URLリンク(gendai.ismcdn.jp)
日本の格差は、上のコラムを見てもらえればわかるが、先進国の中ではそれほど広がっていない。
そのひとつの理由は、日本の所得税や相続税の最高税率が、先進国の中で最高水準であるからだ。
池上氏の番組では、日本の格差はそれほどでもないという事実を言わずに、「日本の格差が酷い」
という前提で話が進められているので、後で述べるように、提言もピンぼけになっている。
池上番組で残念だったのは、部分的に正しい指摘があっても、それが提言に生かされていない点だ。
そのひとつは、「バブル崩壊以降、日本では貧しい人がさらに貧しくなって格差が広がっている」といい、
生活保護者数が増えているといっていたが、それが90年以降のデフレが原因、という指摘が全く
なかったのは、番組担当者が格差の正体をまったく理解していない証拠だ。
番組の中では、雇用の守られている人と守られなかった人の格差がある、といっていたが、
なぜデフレの時代に雇用が守られなかったのかが、わかっていないのだ。
番組内では、モノの価格は安い方がいいに決まっている、という決めつけが見られた。
しかし、マクロ経済の話だと、物価の下落は失業の増加に直結する。失業が増えれば、
まさに番組の中でも言及されていた、「雇用の守られている人と守られなかった人の格差」
が生じるわけだ。
この経済学の基本がわからないから、デフレが格差の原因になっている、と思い至らない。
さらに、雇用を確保するためには金融政策が重要ということにも、池上氏は理解していない
のではないだろうか。というのも、池上氏はかつて日銀の広報関係の仕事をしていたが、
金融政策と雇用との関係は当時の日銀から教えてもらえなかった可能性があるからだ。
むしろ、金融緩和は弊害があるとさえ思っているかのようだ。
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URLリンク(gendai.ismedia.jp)