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2016.8.17 01:00
★【生前退位 私はこう思う】万世一系に意義 旧皇族復活を 東京大学名誉教授・平川祐弘氏
昭和天皇の喪が明けた平成2年、私は今上陛下のご即位をお祝いするNHKの番組に招かれた。
その折の座談で、学習院の古いご学友が「私は今年、定年退職なのに、陛下はこれからお務め
なのだからご苦労さまですね」と、極めて率直に言われたのが印象的だった。このほど、退位のご意向を
お述べになられたお姿を拝見し、そのことを思い出した。あれから四半世紀、お年を召された陛下が、
務めを果たすのが困難になると訴えられたのは、深く人間的なお姿で心打たれた。
即位以来、両陛下は人々と喜びと悲しみを分かち合い、国民の安寧を祈り、さらには南海の島に
渡られて、国のために命を落とした人の霊を慰められた。神話の御代(みよ)に連なる伝統の継承者
として、日本国民とともに祈り、先祖の霊を祀(まつ)り、お務めを果たしてこられた。国法を重んじる
ご精励は、誰もが親しく拝察している。さぞかしお疲れだろうと、陛下のお言葉を、世間の多くの人が
もっともと承服するに違いない。
ただ、ことは陛下お一人でなく、今から位を継がれる皇太子殿下はじめ皇族方に関することである。
陛下のご疲労であるとともに、敗戦直後、あわただしく制定された皇室典範や憲法の制度疲労でも
あろう。その改正がなされなかったのは、歴代政権が目先のことに追われ、打つべき手を打たなかった
怠惰のゆえではないかと考えると、恐れ多いことに感じた。
新憲法制定時に比べ日本人の寿命が延び、既に今上陛下のご即位の年齢より、皇太子殿下の
年齢が上になっている。これから先も、60歳、70歳で即位される場合が続くことも考えられよう。
陛下のご発言どおりご退位となると、皇室典範の改正を急がねばならぬが、生前退位を認めると、
政治的利用の可能性が心配される。さしあたり、現行法で対応できる摂政を置く方が無難だと私は思う。
「天皇は、日本では、魂のように現存している。天皇はつねにそこに在(あ)り、そして続くものである」。
これは駐日フランス大使であった詩人ポール・クローデルが、既に大正時代に述べたことで、
日本の天皇はドイツの皇帝(カイザー)やロシアの皇帝(ツァー)とは違い、現実政治に直接関係しない。
だから、明治憲法は日本の天皇をドイツ憲法風に解釈し、昭和の1946年憲法(現行憲法)も
アメリカ風に解釈したが、どこかに日本の国体とずれがあるのではないか。
日本の天皇家の意味は、国政に直接関係せず、「続く」ことにより、そして「祈る」ことにより、
民族の永生の象徴となっていることにある。万世一系という命の永続性こそ、今の憲法が定義する
「国民統合」や、世間が目を向けがちな「皇室外交」より、さらに大事な歴史的意義があると私は信じる。
この際だから、生前退位を認めるのであれば、憲法も皇室典範も大幅に手直ししてはどうか。
旧皇族を復活し、男系の天皇が末永く続くようにしていただくとありがたい。天皇家が日本国民とともに、
天壌無窮(てんじょうむきゅう)、末永く栄えることを祈る次第である。(談)
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