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★鳥越氏「女子大生淫行」疑惑は、本当に「取るに足らない」ニュースなのか
主要メディアはそろってスルー
2016年07月27日(水) 牧野 洋
(中略)
■経営学者ドラッカーが「リーダー」に求める資質とは
言うまでもなく、有権者は投票前に候補者について十分な情報を提供されるべきであり、
この点でメディアは重要な役割を果たしている。ただし、有権者によって求めている情報は
千差万別だ。次もフィードラー氏の記事からの引用だ。
〈 候補者の政策を重視し、候補者の信条や行動に無関心の有権者がいる一方で、
候補者がどんな人物であるのか、つまり人格を重視する有権者も大勢いる。
(中略)候補者の人格を示す情報をあえて伏せるジャーナリストがいるとしたら、
不作為の罪を犯しているに等しい。〉
米国大統領と同様に、東京都知事もリーダーであり、リーダーとしてふさわしい資質が求められる。
生前の米経営学者ピーター・ドラッカー氏にリーダー論を聞くと、必ず出てくるキーワードがあった。
「人格(character)」だ。大著『マネジメント』の中で同氏は「リーダーが指導力を発揮し、
部下に対して模範を示すためには何が必要か。人格である」と断じている。
週刊文春は7月28日号で、10年以上前に鳥越氏が当時20歳の女子大生を別荘に連れて
行って強引にキスし、ラブホテルにも誘ったという内容の記事を載せている。証言している人物は
女性本人ではなく夫であり、しかも匿名である。これでは第三者による検証が不可能であり、
どこまで発言を信用していいのか判断できない。
鳥越氏側は女性スキャンダル疑惑について「事実無根」として文春編集部に抗議文を送ると同時に、
名誉棄損と公職選挙法違反の疑いで東京地検に刑事告訴。各種報道によると、同氏自身は
街頭演説後に記者団に取り囲まれると、「別荘に行ったかどうか」「女性に心当たりがあるかどうか」
といった基本的質問に対しても「弁護士に一任」を理由に返答しなかった。
たとえ20歳の女性とキスしたのは事実でも、それだけで都知事選を撤退させられるのはおかしい
という見方もある。だが、ハート氏は29歳のモデルとキスしている場面を目撃されたわけでもないのに
大統領選から撤退した。
ここで重要なのはキスしたかどうかではなく、ウソがあるかどうかである。焦点は「人格」なのだ。
■日本の政治報道はいまだ「ハート前」なのか
鳥越氏がウソをついているかどうかは外部からは分からない。「事実無根」という表現を額面通りに
解釈すれば、一切ウソをついていないということなのだろう。
ならば「事実無根」を信じて有権者は投票すべきなのか? それとも文春報道に真実が含まれると
信じて投票すべきなのか?
はっきりしているのは、投票日が31日に迫っており、このままでは有権者は候補者について十分な
情報を提供されない状態で態度を決めなければならないということだ。
メディアは候補者についての情報を提供する役割を担っているとはいえ、あまりにも時間的制約がある。
この意味では文春が見切り発車的な特集を組むのは仕方がない。
仮に鳥越氏が都知事に選ばれた後に文春報道に真実が含まれていることが明らかになったら?
この場合、同氏はウソをついていた格好になる。リーダーとしての人格を問題視され、再び都知事選の
やり直しになるかもしれない。
ちなみに、大新聞やNHKなど主要メディアは、産経新聞を除いて文春報道を実質的に無視。
鳥越氏側が文春編集部に抗議文を送ったり東京地検に刑事告訴したりした事実を短く伝えているだけだ。
女性スキャンダル疑惑をあえて避けているように見える。
取るに足らない話だから疑惑には触れないという方針なのか。それとも文春報道は事実無根だから
無視してかまわないと考えているのか。どんな編集判断をしているのか、紙面からはまったく見えてこない。
いずれにせよ日本の政治ジャーナリズムはまだ「ハート前」の世界にあるようだ。
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