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★「九条の会」の逞しき商魂 右派は寄付のみで物販の発想なし
2016.07.15 07:00
参院選挙の投票日を約一ヶ月後に控えた6月6日の夜、若手保守論客・古谷経衡氏が足を運んだのは、
『九条の会 東京2016 in中野』の会場(東京都中野区の「中野ZERO」)。革新系文化人らを筆頭に、
9条護憲を唱えるリベラル系市民運動の総本山が「九条の会」だ。そこで、古谷氏はある発見をしたという。
* * *
私はこれまで、右派の集会に数えきれないほど足を運んできた。そこから毎度感じるに、革新左派の
この手の決起集会・大集会の類は右派のそれとは比較にならぬほど洗練・組織化されているのを感じる。
登壇者はことあるごとに、スピーチの終わりにカンパを呼びかけ、また自著出版物の購買を叫ぶ。
仰天したのは登壇者の高校生の「沖縄平和学習旅行」の旅費までもカンパで募ろうという呼びかけであった。
しかしそれに呼応するカンパシステムはよく整備されており、入場料1500円(当日)のほかに、各所にカンパ箱、
カンパ便箋が用意され、入場者の義侠心をくすぐる設計となっている。
特筆すべきなのは会場前のホールで展開される物販コーナー。新日本出版社など、日共系出版物を専門に
扱う移動書店が特別出店する。聞くと店舗を一切持たぬ出張専門の業態。これだと小在庫を経営者宅の
一室に保管すればよく、店舗維持費用は必要ない。
大型書店すら撤退が相次ぐ中、ニッチな革新集会専門の書籍販売にはまだまだ未来がある。
上杉聰著の『日本会議とは何か「憲法改正」に突き進むカルト集団』(合同出版)が平積みにされていたので、
いま話題の菅野完著『日本会議の研究』(扶桑社新書)はないのか、と聞くと、扱いなし、という。
扶桑社はフジサンケイグループの一員。産経・正論の利にいささかでも与しない、という魂胆なのかどうかは不明だ。
彼らの商魂は逞しい、の一言である。紙芝居“「戦争する国」にさせてたまるか!”は、ヒトラーと安倍が並列して
描かれるポンチ絵のセットであるが、売価2500円也。原価はせいぜい500円~800円といったところだろうか。
記念購入する。『原爆の図』で著名な美術家・丸木夫妻による「丸木美術館」の絵画をはめ込んだ小判型
マグネットは一個500円也。
全17種類全部を買うから少しまけてくれ、と売り子に頼んだが「(丸木美術館に)ライセンス料を払っているから」
と拒否され、代わりに「アベ政治を許さない」の缶バッジとうちわをオマケしてくれた。締めて8500円也。
老女が「廃炉招福」「(安保法)廃案成就」「一票一揆」なる文言が入ったお札シールを1枚100円で売っていたので、
全5種類500円分をくれと言った。千円札を出すと「残りは寄付で良いよね」などと言われ、釣銭を半ば強制的に
没収される。天晴れというほかない商魂の逞しさに舌を巻く。こちらも原価1枚20円未満といったところか。
右派にはこういった商魂がない。独自の草の根全国団体や、日共に類する戦前からの政党組織を持ちえない
という歴史の浅さも関与しているが、やはりセンスがないと思う。
右派が「憲法改正」を叫ぶ大決起集会では、受付にささやかな寄付箱があるだけで、物販をしようという発想に乏しい。
金銭授受はなるべく目立たぬように、という配慮すらある。商魂を見せるのは卑しい、とでも思い込んでいるのだろうか。
「商」を一等下に見る、年功序列の旧態依然とした貴族的儒教精神が見え隠れする。
いわゆる「田母神問題」で政治資金をめぐる疑惑が立件へと動くと、ますます右派は金銭に敏感になっているような
気がする。しかしこれでは発展がない。革新の商魂やセンスを見習うべきだろう。彼らはSEALDsを含めて、
その組織動員、収益構造という意味で、右派にはるかに先行している。
今回、「九条の会」で展開された主張には首をかしげざるを得ない部分も多かったが、少なくとも組織力において、
右派運動の後進性を痛感した次第だ。さて次なる熱狂の地はいずこか。
※SAPIO2016年8月号
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