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★ドイツと中国の"蜜月"に走り始めた亀裂~メルケル首相が見せた冷徹な手のひら返し
記者会見で首脳同士が激しく応酬
2016年06月24日(金) 川口マーン惠美
■記者会見でも「李克強vsメルケル」の応酬
ドイツがこういう事態に陥ってしまったのには、理由がある。
一昨年、中国の太陽光パネルのダンピングでEUが困り果て、関税制裁をかけたとき、中国に頼まれて、
その内容を骨抜きにすることに尽力したのがドイツだった。だから中国は、今度もドイツにその役目を
果たしてもらおうと期待しているのだ。
メルケル首相もそこらへんは弁えていて、李克強氏のプレッシャーをのらりくらりとかわしつつ、中国を褒めたり、
人権問題を突いたりしながら、あまり中身はないが立派な文脈を紡いでいた。
15年前に結ばれたEUと中国の約束については「とてもはっきり覚えており、それを白紙に戻すつもりはない」が
、「ドイツはEUの中の一国なので、これについてはEU委員会が交渉と対話を行う」とか。そもそも、一党独裁の
国が真っ当な市場経済国でありえないということは、わざわざEUの議会で討議しなくてもわかるはずだが……。
この後、記者の質問があったが、これが面白かった。
初っ端から、李克強氏がメルケル首相に向けられた質問を奪い取ってしまったのだ。
それもそのはず、質問内容は、“中国企業はドイツのハイテク企業を買収できるが、中国市場は閉鎖的で
そのようなことは許されていないのをどう思うか”とか、“南シナ海で起こっている事態を見て、ドイツでは、
中国は間違った方向に進んでいるという声があるが、それをどう思うか”などという、中国にとって不都合なものだったからだ。
李克強氏は奪った質問に長々と答え、最後に質問した記者に向かって、「メルケルさんに代わって私がお答えしました。
でも、誤解しないでください。私はメルケルさんのためにしたのです」と言い、次にメルケル首相に向かい、「メルケルさん、
私のことを誤解なさることはありませんね。悪く思わないでください。どうもありがとう」と締めた。
メルケル首相はそれに対して、「もちろん悪く思ったりはしませんが、でも、私も発言する自由をいただくことにして…」と、
また、あまり中身のない、絶対に揚げ足を取られない、立派なことを喋った。
しかし、次の記者が二つの質問をしたときには、ちょっとした押し問答になった。1問目はメルケル首相にと言っているにも
かかわらず、李克強氏が「それは私が両方まとめてお答えします」と言い出したのだ。
それにはさすがのメルケル首相も引っ込まず、「いえ、私が答えます。第1問目は…」と言いかけたところで、
またもや李克強氏が割って入った。「じゃあ、あなたは1問目をお答えください」。
するとメルケル氏いわく、「2問目は私にではない? 両方とも私への質問だと思いますよ!」
そして一瞬、「でも、もし、2問目が中国の首相へのものなら…」と戸惑った末、突然、「もう、どっちでもいいわ。
私は言いたいことを言います!」と居直って、泰然として話し始めたので、さすがの李克強も黙ってしまった。
■斬新なメルケル話術
そんなわけで、おそらくその場にいたら、結構スリルに満ちた記者会見だったと思われる。
とはいえ、中国の政治家が、記者会見で他人の質問を取ってしまうのは、よくあることだそうだ。
日本の岸田外相もそれをやられて、呆れかえり、「やれやれ」と首を振っておしまいになったことがあったという。
だが、そういう意味では、“取られたものは取り返す”ドイツ人に学ぶべきところは多いかもしれない。
特に、「約束を守っていないではないか!」と責められた時、「その約束についてははっきり覚えています」と堂々と
言ってのけるメルケル話術は斬新だった。私生活でも大いに利用できそうだと、私は一つ賢くなった気がしている。
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