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★【トランプと世界】根回し役として期待高い安倍首相 首脳会談の歴史と日本の立ち位置
2016.05.25
首脳会談は、近年になって盛んに行われるようになったものだ。
その始まりは、二度の世界大戦を戦ったフランスとドイツが誤りを繰り返さないために頻繁に
首脳同士で話し合おうと考え、ド・ゴール大統領と、アデナウアー首相(=当時、西ドイツ)
が1963年に定期的な会談を始めて以来で、両国首脳は大体、毎月会談している。
多国間の首脳会談も、フランスのジスカール・デスタン大統領の発案で75年、欧州首脳会談と
先進国首脳会議(=サミットとは海外では首脳会談の一般名詞だが、日本では単にサミットと
いうとこれを指す。第1回はパリ郊外・ランブイエ城)が始まった。
特に、この時代は、ジスカール・デスタン氏とシュミット首相、ミッテラン大統領とコール首相という
「仏独コンビ」が絶妙で議論を引っ張り、日本の大平正芳、福田赳夫、中曽根康弘の歴代首相が、
仏独と英国・米国の間を取り持つかたちで存在感を示した。
最近では、サミットの議論を引っ張るタイプの指導者がいないのが現状で、
それがサミットそのものの役割低下につながってきた。
しかし、今回の伊勢志摩サミットでは、安倍晋三首相の立ち位置はなかなか好ましいものだ。
フランスのオランド大統領とイタリアのレンツィ首相、カナダのトルドー首相といった
「中道左派的」で財政出動にも前向きなグループがある一方、ドイツのメルケル首相や英国の
キャメロン首相のような、やや「新自由主義的」な中道右派がいて、オバマ米大統領と安倍首相が
「中間派」と言っていいと思う。
オバマ氏は根回し役が苦手だから、安倍首相への期待は高い。連休中のヨーロッパ訪問でも
順調に成果を上げ、ロシアのプーチン大統領とも会談して、準備万端といったところだ。
マスコミの一部には、5億円の出張費が無駄だとか、物見遊山だとか恥ずかしいレベルの低い批判があった。
経費を使わないことだけが生きがいで、仕事をしない人物が良い首相とでも言いたいのだろうか。
あるいは、「日本の首相には仕事をさせない方がいい」という、中国の工作活動の片棒を担いでいるのだろうか。
広島での外相会議など、事前に国内各地で多くの閣僚会議が開かれた。これらは、地方における
国際交流基盤の整備や、経験の蓄積、海外での観光宣伝にも役立つ。内容的にも非常に充実していた。
さて、来年のサミットに「トランプ米大統領」が参加したら、どうなることやら。
■八幡和郎(やわた・かずお) 1951年、滋賀県生まれ。東大法学部卒業後、通産省入省。
フランス国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任し、退官。
作家、評論家として新聞やテレビで活躍。徳島文理大学教授。著書に『「領土」の世界史』(祥伝社新書)、
『日本人の知らない日米関係の正体 本当は七勝三敗の日米交渉史』(SB新書)など多数。
URLリンク(www.zakzak.co.jp)