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2016.5.25 01:00
★【日米同盟が消える日(下)】「安保ただ乗り論」は本当? 駐留費負担、実は世界でも突出…米軍人を日本の傭兵にする気なのか
「なぜ、米国は自主防衛の余裕のある国を守るための支払いを止めるべきなのか」
米大統領選で共和党候補指名を確実にした不動産王、ドナルド・トランプ氏が意見広告で問題提起
したのは、1987(昭和62)年9月にさかのぼる。日米貿易摩擦が激しかった80年代、
米国では日本の「安保ただ乗り論」が吹き荒れていた。トランプ氏の対日認識は、その時点から
変わっていないことになる。
日米同盟は、日本が米軍駐留を認め、基地を提供する一方、米国だけが日本の防衛義務を負う
非対称の側面を持つ。そこに「ただ乗り論」が浮上する構造的な理由がある。ただ、トランプ氏の
いうように、日本はそれに見合う適正なコストを支払わず、同盟にただ乗りしているのだろうか。
日本は在日米軍の駐留経費として、別枠計上の米軍再編関連予算などを除き、平成28年度予算で
約5818億円を計上し、地代や周辺対策費、基地で働く人の人件費などに充てている。
そのうち、しばしば取り上げられるのが「思いやり予算」と称される接受国支援(ホスト・ネーション
・サポート)だ。日米地位協定上は支払い義務のない負担で、昭和53年度から計上され、平成11年度
に2756億円とピークを迎えた後は漸減。28年度は1920億円となっている。
そうした日本の負担が、米軍が駐留する国の中で突出して高いことは、米国防総省が2004年に
公表した報告書が示している。報告書によると、02年に日本が駐留米軍1人当たりに支出した金額は
約10万6000ドル(約1155万円)。日本側の負担割合は74.5%でサウジアラビア(64.8%)
や韓国(40%)、ドイツ(32.6%)などを大きく上回っていた。
トランプ氏は「なぜ100%ではないのか」と全額負担を求めるが、それは米軍将兵の人件費や
作戦費まで日本が負担することを意味する。
「米将兵の人件費まで日本が持てば、米軍は日本の『傭兵(ようへい)』になってしまう。
国益のために戦う米軍人の誇りを傷つけるだけで彼ら自身が嫌がる」。
前海上自衛隊呉地方総監の伊藤俊幸氏はこう指摘する。
日本の負担は米軍駐留に反対する勢力の批判の的になってきた半面、「安保ただ乗り論」への
反論材料でもある。さらに、沖縄の基地問題にみられるように、国土を提供することの「重み」
や政治的コストは数字に代えがたいものがある。
日本は自衛隊の海外派遣など人的貢献も強化し、米国が主導する国際秩序の維持に貢献してきた。
集団的自衛権の行使を柱とする安全保障関連法は、さらにその領域を広げる。
ケビン・メア元米国務省日本部長が「日本が駐留経費負担だけでなく、日本の防衛能力を向上させ、
集団的自衛権が行使できるようになったことを理解していない」と指摘するように、日米関係に
通じた米側の政策当局者や識者には、日本の貢献は高く評価されてきた。
日米同盟の「受益と負担」の関係は金銭だけでは測れない。ドナルド・トランプ氏に欠けているのは、
日米同盟によって、米国自身が死活的な国益を確保しているという視点だ。
「米国の世界の貿易額のうち、約6割がアジア太平洋諸国であり、その国益を維持するのが
在日米軍などのプレゼンス(存在)だ。引けば損するのは米国だ」
元防衛相の森本敏拓殖大総長はそう指摘する。
日本国内には約130カ所の米軍基地がある。海兵隊が米本土外で司令部を置くのは沖縄だけだ。
西太平洋からインド洋までを作戦海域とする米海軍第7艦隊は神奈川・横須賀を拠点とする。
後方支援機能を含め、日本は「米軍の地球規模での作戦行動を支える上で、代えることが
できない戦略的根拠地」(防衛省幹部)というわけだ。
>>2へ続く
URLリンク(www.sankei.com)
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