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三菱UFJリサーチ&コンサルティング2016年04月11日 18:51
★「移民政策はとらない」発言にみえるズレと求められる論点の整理
2016/04/06 経済政策部 兼 外国人活躍推進室 研究員 加藤 真
本稿は、「日本は移民政策はとらない」という政治家の発言を素材にして、その発言内容が、
現在までの国際的な移民の潮流や、移民政策の範疇とずれていることを示し、多様化する外国人に
関する議論の論点を整理することを目的としている(注1)。
■外国人労働者の受け入れを議論する特命委員会の立ち上げ
外国人労働者や移民に関する議論が活発化している。2016年3月には、自民党内に
「労働力の確保に関する特命委員会」が立ち上がり、外国人労働者の受け入れに関する議論が開始された。
4月までに提言をとりまとめる予定という。
外国人労働者の受け入れ拡大に関しては、保守系議員の反発が強い「移民政策」に議論が及ぶことへの
危惧から、3月15日の初会合時には、自民党政調会長の稲田朋美議員より、「日本は移民政策はとらない」
と明言があった上で、議論が開始されたと報道されている(注2)。
以下では、この外国人労働者の受け入れを検討する場における「移民政策はとらない」という発言について、議論を進めたい。
■「移民政策はとらない」発言にみえるズレ
「日本は移民政策はとらない」という発言は、「外国人のうち『いわゆる単純労働者(注3)』とされる層の人々を、
永住を前提として受け入れる政策はとらない」といった趣旨であると推測されるが、そもそも、これだけをもって
「移民政策」とするのは、これまでの国際的な移民の潮流や、移民政策として捉えるべき範疇と齟齬があると考える。
以下では、主に2点の「ズレ」としてまとめたい。
① 移民はホスト国の思惑通りにはコントロールできない
第一は、外国人の出入国管理の考え方のズレである。「移民政策はとらない」という発言には、移住者の定住・永住化は
想定せず、在留期間を定めた「時限的な受け入れ」を行い、「期限がくれば出国させることができる」という暗黙の前提があると推察される。
だが、移民研究の第一人者であるカースルズとミラー(Castles & Miller 2009=2011)は、21世紀の国際社会では、
外国人の受け入れ国での外国人永住者の増加は不可避的であり、政府が外国人労働者を受け入れる政策を行うのであれば、
受け入れた外国人労働者の中に永住する者がいることを最初から想定した政策が必要だと指摘している。
事実、20世紀末から21世紀にかけて、先進国を中心に入国管理を厳格化させ、「望まれない」移民の流入を阻止するための
最新テクノロジーが国境管理に導入されてきたにも関わらず(森・エレン 2014)、他国で定住する人口は、1990年時点の
約1.55億人から、2010年には2億人を超えるまでに増加している(UN 2011)。
こうした国際的な潮流に合致する傾向はわが国でもみられる。わが国では、永住化政策を行ったわけでもないのに、
在留資格の「永住者」と「特別永住者」(注4)を足した人数は、1996年以降一貫して増加しており、2015年末には104万人を超え、
在留外国人全体の半数近くを占める勢いである(法務省 2016)。この増加傾向は、「特別永住者」の継続的な減少、
および、リーマンショックや東日本大震災に起因する在留外国人の全体数の減少があったにも関わらず続いている。
また、一度受け入れた外国人の定住・永住化について、アメリカ―メキシコ間における移民政策の事例は示唆に富んでいる。
アメリカでは、第二次世界大戦期の労働力不足からメキシコへの門戸を開放したが、その後、厳重な国境管理とメキシコ人
移民の締め出しに転じた。だが、すでにアメリカには彼らを労働力として頼る構造ができており、加えて、国境管理が厳重に
なることで、メキシコ人移民には、一度帰国したらアメリカへの再入国は難しくなるという判断を促し、結果的に、アメリカ国内
でのメキシコ人移民の滞在長期化や家族の呼び寄せが誘発され、移民人口は減少どころか増加するという意図せざる
結果を招いた(Durand & Massey 2004)。
以上のデータや事例は、移民はホスト国の思惑通りに都合良くコントロールできるわけではないことを示している。
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