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2016.3.2815:00
★【ヘイトスピーチ条例考（下）】「朝鮮半島に帰れ」「在日特権？あるか！」飛び交う主張・罵声予想される“申請合戦”、困難な審査に委員は…
法律に先駆けて、１月に成立した大阪市のヘイトスピーチ（憎悪表現）抑止条例。
条例で定義したといっても、社会ではさまざまな解釈があることから、すでに賛否双方の声がわき起こっている。
条例は基本的に申請をもとにヘイトスピーチに当たるかどうか審査を行うことにしており、実際に認定、
さらに名称の公表という「規制」を行う仕組みづくりはこれから。“申請合戦”の恐れもある中、審査を担う委員の人選、
ヘイトスピーチと正当な言論活動の線引きなど、運用前から課題は浮上している。
■警察官がなだれ込み…
３月１３日午後。大阪市東住吉区の市立施設。憲法が保障する「表現の自由」の観点から、
ヘイトスピーチ抑止条例の成立に疑義を呈する側が主催して実施した条例賛成・反対両派による討論会は、
終了間際に緊張した空気に包まれていた。
「分かり合えないならケンカするしかないねん！」
「おめえらがヘイトスピーチ繰り返すからあかんのじゃ、ボケ！」
約７０人の参加者のうち一部がつかみ合いに発展しそうになり、施設外で警戒していた警察官１０人以上がなだれ込み、
双方の間に割って入る騒ぎになったのだ。いらだった条例賛成派の若者が条例反対派の高齢者に「お前ら早よ帰れ！」
と大声で叫ぶ場面もみられた。
住宅街である施設周辺も異様な雰囲気に包まれた。
「差別主義者は帰れ！二度と来るな！」「在日特権？あるかボケ！」
激しい言葉が書き連ねられたポスターを掲げた集団約５０人が施設を取り囲み、１００人以上の警察官が警戒。
周辺では「ヘイトスピーチ常習犯の市立会館利用、許さない」とのポスターを張った民主党の車が巡回。
車には有田芳生参院議員の顔写真も。参議院に人種差別撤廃施策推進法案を提出した
民主、社民両党などでつくる議連の中心メンバーだ。
施設を囲んだ側は、討論会の主催者側が過去に「朝鮮人だけは迷惑」などと差別的な発言をしていたとして、
「今回もヘイトスピーチを行う可能性が高い」と断定。市に施設使用許可の取り消しを事前に求めた。
吉村洋文市長は「人々が広く使用できる施設の事前規制は慎重であるべきだ」と取り消し要求に応じず、
予定通りの開催となった。
■メンバー構成が拍車
こうした緊迫した対立の背景には、参加者のメンバー構成がある。
ヘイトスピーチ抑止条例を「在日特権条例だ」と主張する主催者側には、「在日特権を許さない市民の会」
（在特会）の元幹部が含まれていた。
これに対し条例賛成派として、在特会などに対抗する街頭活動「カウンター」を行う「Ｃ．Ｒ．Ａ．Ｃ（対レイシスト行動集団）」
の幹部も参加。前身は「レイシストをしばき隊」で、平成２５年６月、東京・新宿で在特会などと互いに参加者を殴ったり
つばを吐きかけたりしたとして、双方のメンバーが逮捕されたこともあった。
２６年７月にも、大阪市内で２５年秋に行われた韓国人排除を掲げる右派系団体のデモをめぐり、参加しようとした
男性を集団で取り囲み暴行を加えたとして、反レイシズム（人種差別主義）をうたうグループの幹部が大阪府警に
逮捕されている。このとき、グループ側は「てめえ許さねえぞ」「お前がヘイトなんじゃ」などと脅した上、暴行を加えていたという。
一般的には、韓国・朝鮮人らに対するヘイトスピーチを行う団体側の言動に注目が集まりがちだが、
実は反ヘイト側の言動の方が過激なケースも少なくない。それだけ対立の根が深く、警察当局も警戒を強めているのだ。
■「何がヘイト」めぐり平行線
討論会自体は大きな混乱はなく、約３時間にわたって行われた。
条例反対派の一人は「われわれが主に訴えているのは、韓国などが主張する慰安婦問題や北朝鮮による
拉致事件に関する（正当な）批判。だが、『条例ができたから市立施設を貸すな』といった極端な声が出ている」
と懸念し、こう問題提起した。
「『在日特権条例』のような運用をされる可能性があるのではないか。一体ヘイトスピーチとは何か」と問題提起した。
>>2へ続く
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