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★人事異動が5月にずれた朝日新聞「台所事情」
4月1日は、新年度の始まりの日。ほとんどの企業の人事異動は、この日付で行われるのだが、
1カ月遅れの5月1日付という会社がある。かの朝日新聞だ。
「異例中の異例ですよ」
と首をかしげるのは、さる朝日OB氏。
「4年に1度、4月に行われる統一地方選挙の年だけは、取材の継続性に鑑みて5月1日付というのが通例でした。
でも今年は違う。いったい何が……」
当の朝日新聞に聞くと、
「異動時期については総合的な見地から判断しており、今春は全体として5月1日付が多くなりました」
との答え。だがその“総合的な見地”とは、台所事情の苦しさのようだ。
「2年前の“慰安婦誤報”が相当響いていますね」
と、先のOB氏が嘆くように、最盛期は800万部あった部数が、昨年12月時点で約662万部と激減。
広告収入も盛時の3分の1ほどに落ち込んでおり、2015年度の中間決算では、グループ全体の売上高は
前年同期比4・3％の減収、さらに営業利益は30・5％、経常利益が12・3％の減益となっているのだ。
弥縫（びほう）策として昨年から今年にかけ、早期退職者募集や平均年収160万円削減といった策を打ち出したが、
「実は、最終決算はさらに厳しくなりそうなのです。そこで新たな策として、5月異動が出てきました」
と、朝日の現役社員は言う。でも、“5月異動”がなぜ有効な策になるの？
「転居を伴う異動の場合、転居費は会社が実費負担してくれます。4月異動だと3月中の転居になるので、
この費用は15年度の経費です。ところが5月異動で4月に転居すれば、16年度に組み入れることができる。
これで15年度の赤字を、少しでも減らそうということなのです」（同）
涙ぐましい努力ではないか。しかも引越業者によれば、転居の集中する3月下旬よりも、
4月下旬のほうが3割ほど安いというから、
「転居費そのものも安くあげるという、一石二鳥のアイデアなのでしょう」（同）
世間（よのなか）を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば（貧窮問答歌）
―朝日の社員諸氏は、さぞかしこんな気分かも……。
週刊新潮2016年3月24日号 掲載
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