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★鴻海 シャープから欲しいのはサムスン等に勝つ液晶技術だけ
NEWSポストセブン / 2016年3月8日 16時0分
名門企業・シャープが外資の巨大な力に翻弄されている。2月25日、シャープは台湾の
鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入って経営再建を図ることを決めた。その前日、
約3000億円超にのぼる「偶発債務(将来的に債務になる可能性のある潜在リスク)
リスト」を鴻海側に伝達した。
これに激怒したのが鴻海グループの総帥である郭台銘・会長だ。「契約直前での開示は
信義破りだ」と、2月末が期限だった交渉の延長をシャープ側に通告。日本の大手電機
メーカーが初めて外資の軍門にくだる「世紀の買収劇」は、土壇場で大荒れの様相を見せている。
鴻海の創業は1974年。当初は白黒テレビの部品生産を手掛け、1990年代末から電子機器
などの組み立てを請け負う事業に参入。以降、急成長を遂げ、グループ売上高14兆8000億円
(2015年12月期)、従業員数約100万人(連結推計値)の「帝国」を一代で築き上げた郭氏は
「現代のチンギス・ハーン」と呼ばれる。
1日16時間働くことで知られ、軍隊式のトップダウンの経営手法が代名詞だ。
今回の買収交渉を取材し続けてきたジャーナリストが語る。
「郭氏は“超ワンマン”です。契約条件にある経営陣留任、従業員の雇用維持は、
リップサービスにすぎません。現経営陣が居座れるのも今年6月の株主総会まででしょう。
出資後66%の株式を取得するのと引き換えに、シャープの取締役13人のうち9人が鴻海側
から送り込まれることになっています。以降は鴻海主導で何事も決まっていくわけで、
大規模なリストラもあり得る。40歳以上は言うに及ばず、40歳以下の社員も安泰ではない」
そもそも鴻海の買収目的がシャープの救済でないことは明らかだというのは、
シャープ問題に詳しいジャーナリストの北沢栄氏だ。
「鴻海が手に入れたいのはシャープの液晶技術力です。中でも従来製品より消費電力が
少なく、折り曲げることもできる有機ELディスプレイは、これからのタブレットや
スマートフォンに標準搭載されていくことが確実視されています。
現に鴻海が受託製造を受けているアップルは2018年に予定していたiPhoneへの
有機ELディスプレイの搭載予定を2017年の秋に早める動きを見せている。
アップルから同生産を一手に請け負うためにはシャープの技術力が不可欠なのです」
有機ELはライバルのサムスンやLG電子といった韓国電機メーカーも
「次世代の世界標準規格」と見定めているため、熾烈な開発競争が予想されている。
鴻海はシャープに投じる成長資金の約半分を、有機ELパネル開発など液晶部門に
回すと見られている。郭氏はライバルに勝つためにシャープの技術力が必要なだけなのだ。
鴻海にしゃぶり尽くされるのではないかという危機感が募るシャープ社内では、
社員が“脱走”を始めているという。ジャーナリストの片山修氏が語る。
「かつての“技術のシャープ”を支えた優秀な技術者の多くは、すでにパナソニックや
サムスンなどに移っています。おまけに鴻海に買収されることでシャープは本当に再建
できるのかと、社員の多くが未来図を描けず不安だけを募らせている。今のシャープは
技術力も士気も衰えた沈没寸前の状態です」
※週刊ポスト2016年3月18日号
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