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★中国の新たな対日歴史戦 「南京慰安婦博物館」に初潜入
昨年末、中国・南京に慰安婦関連の新たな博物館がオープンした。当時、同地にあった
旧日本軍の慰安所を再現したものだという。なぜ今、中国政府は、こうした施設を開設
したのか。小誌で、精力的に中国ルポを発表するノンフィクションライター・安田峰俊
氏が現地を訪れた。
* * *
「身分証を出せ!」─警備中の武装警察に声を掛けられた。私のパスポートを怪訝な
表情で何度も確認し、やっと敷地内に通してくれる。追悼と学術研究が目的の「陳列館」
にしては、ずいぶんと訪問の敷居が高いようだ。まばらな観覧者に対して、各所に警備
担当者が何人も立哨する様子は、この場所が持つ濃厚な「政治性」を何よりも雄弁に
物語っていた。
ここは南京市の中心部。往年の中華民国総統府にほど近い、古都の趣溢れる路地裏だ。
私が訪問した施設は利済巷慰安所旧址陳列館という。国営通信社・新華社によれば、
この場所が「元慰安所」として“発見”されたのは2003年6月のこと。女性国際戦犯
法廷での証言経験を持つ北朝鮮籍の元慰安婦・朴永心氏(故人)の証言によるものだった。
やがて、習近平が党総書記に就任した直後の2012年12月に陳列館の設置計画が具体化。
現地の愛国主義教育基地・南京大虐殺記念館の分館の形で、昨年12月1日から一般公開された。
敷地面積は3000平米。屋外でまず目に入るのは、憔悴した表情を浮かべた巨大な三人の
慰安婦像だ。左側のおなかの大きな女性は、雲南省で保護された当時の朴氏がモデル
だという(朴氏は妊娠中に保護されたが、後に流産した)。
像の周囲には「慰安所」の建築群8棟が鎮座する。市の文物保護単位(重文)に指定されて
いるが、元の木造建築物を壊して新築された。水滴をかたどった壁面のアートは、
「日本軍国主義による人間性への蹂躙と、アジアの女性に苦難と悲しみを与えた」
ことへの涙を意味するそうだ。
建物内部も紹介しよう。最初のホールの天井には、数十人の慰安婦の顔写真を円形に
かたどったオブジェが吊られている。旧日本軍の「性奴隷」制度の非人間性と、
中国がその最大の被害国であると訴える解説板もある。
展示は延々と続く。紹介されているのは中国人や台湾人などのほか、やはり多いのは前出の
朴氏を含む朝鮮人の慰安婦だ。慰安所の部屋や待合室も再現されている。内装は若者向けの
カフェを連想する垢抜けたデザインで、当局の豊富な資金力が見て取れる。
公称によれば、この施設では1600件余りの物品と400枚以上の解説図、680枚以上の写真を
展示中とのこと。もっとも使い回しが非常に多く、実際の情報量は公称の3分の1程度だ。
ハイセンスな外見と施設規模に比して、内容の「薄さ」は否定できない。
陳列館は日曜と祝日は休館し、平日も午後4時半にクローズする。同一人物の参観を月2回以内に
限る規定があるなど、一般市民向けに本気で展示を伝える気があるのか首を傾げる部分も多い。
「敏感な政治問題をはらむ施設だ。陳列館の関係者や、設置運動をおこなった市内の学者の
紹介は勘弁してほしい」
昨年5月から陳列館への慰安婦ポートレートの提供事業に携わり、慰安婦写真集の出版歴も
持つフォトグラファーの李暁方氏はそう話す。単なる歴史陳列館と呼ぶには、あまりに
キナ臭い場所だと言うよりほかないだろう。
※SAPIO2016年3月号
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