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★<パリ同時テロ>欧州全域が脅威に テロ対策としての異文化との共生
2015.11.17 18:00
11月13日、少なくとも8人のテロリストがパリを同時多発的に襲撃し、これによって死者129人、
負傷者352人という被害が出ました。このテロ事件は、ヨーロッパで発生したものとしては、
死者191人、負傷者2000人以上を出したスペインにおける列車爆破テロ事件(2004)に次ぐ規模です。
翌14日、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出しました。これに対して、フランスのオランド大統領は
「戦争行為」と表現し、全土に非常事態を宣言しました。
なぜこのタイミングで、しかもフランスで、ISはテロを引き起こしたのでしょうか。
さらに、この事件はこれまでとどのように違い、どんな影響をもたらし得るのでしょうか。
■シリアでの軍事活動への報復
ISは犯行声明のなかで、「空爆」に言及していました。また、生存者によると、100人以上の死者を出した
コンサートホールで、テロリストは「シリアにおけるフランス軍の空爆」を理由にあげていたといいます。
フランス軍は9月27日から、シリアでIS空爆を行っています。米国や湾岸諸国によるシリアでのIS空爆は、
2014年9月に開始。ISによる「建国宣言」の約3か月後でした。
約1年経って、フランスが有志連合によるシリアでのIS空爆に加わった背景には、
・シリア内戦が長期化するなか、従来は「(自らが対立する)アサド政権を利する」と消極的だったIS空爆の必要に迫られたこと、
・特に9月初旬から、アサド政権と友好的なロシアがシリアでの軍事活動の準備を始めたことで、この地域における力関係の変化に懸念を強めたこと、
・大量の難民の流入により、難民問題の根本解決のため、ますますシリア内戦への関与を強める必要を感じ始めたこと、などが挙げられます。
しかし、この空爆開始が、ISの敵意を強めることにもなったとみられます。
11月16日、やはり7月からシリアで空爆を行っているトルコ政府は、パリでの同時テロ事件と同じ13日にIS関係者による
大規模なテロがイスタンブールで計画されていたものの、これを未然に防いだと発表。詳細は不明ですが、これがパリの
事件と関連があった場合、空爆参加国に対する同時多発的なテロ計画があったことになります。
ISは独自にシリア空爆を行っているロシアに対してもテロを予告していますが、フランスへの攻撃は有志連合の結束を乱すことが大きな目的とみられます。
■反移民の中心地だったフランス
ただし、今回の事件がフランスで発生したのは、直接的なきっかけとしてのIS空爆だけでなく、その背景となる理由もあげられます。
フランスはヨーロッパのなかでも、ISだけでなくイスラム過激派によるテロが起こりやすい国といえます。
ピュー・リサーチ・センターによると、2010年段階でフランスの全人口の約7.5パーセントはムスリムで、これはおよそ470万人にのぼります。
これは比率、人口ともにヨーロッパ最大です。
フランスをはじめ、ヨーロッパ諸国でムスリム人口が増え始めたのは、第二次世界大戦後のことです。
大戦後、ヨーロッパ各国は戦後復興の人手を確保するため、当時の植民地や関係の深い土地からの移民を奨励しました。
その中でフランスには 、アルジェリアなど中東やアフリカから多くの移民が集まりました。出自にかかわらず、フランスで生まれた者には
フランス国籍を付与する「出生地主義」もあって、フランスは文化を超えた一体性をもつ国として知られるようになりました。
その後、冷戦終結で人の自由移動が盛んになったことで、移民の規模は爆発的に増えたのです。 >>2へ続く
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■六辻彰二(むつじ・しょうじ) 国際政治学者。博士(国際関係)。アフリカをメインフィールドに、幅広く国際政治を分析。
横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、東京女子大学などで教鞭をとる。著書に『世界の独裁者』(幻冬社)、
『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『対立からわかる! 最新世界情勢』(成美堂出版)。その他、論文多数。
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