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★日本の治安組織はテロを未然に防げるのか?~警察庁・外事情報部長が記した「見えない敵」との戦い方
2015年11月18日(水) 松本光弘
パリだけではない。日本も潜在的に、イスラム国のターゲットになっている。日本のテロ対策は万全か。
現役の警察庁外事情報部長で、『イスラム聖戦テロの脅威~日本はジハード主義と闘えるのか』の
著者・松本光弘氏の分析をここに公開する。
■日本は「滅ぼすべき対象」
「悪夢が始まる」―〈イスラム国〉の日本攻撃宣言(2015年1月)は記憶に新しい。
〈アルカイダ〉も、かねてから日本への攻撃を明言している。
彼らの主敵・米国と緊密な関係を結び、西側経済の一極を占めるわが国は格好のターゲットだ。
公共交通機関やインフラ施設、大規模イベントは守るのが難しいし、
メディアや国際機関、米軍基地、多国籍企業なども狙われてきた。
日本のムスリム・コミュニティは新しく小規模であることを、安心材料とする見方もある。
しかし、04年鉄道テロの舞台スペインでは、ムスリムの大多数が1990年以降に入ってきた。
ジハード(聖戦)主義者にとっては、仲間以外は殺してよい。アルカイダ・イデオロギーの「ゴッドファーザー」
サイイド・クトゥブによれば、わが国も滅ぼすべき〝ジャーヒリーヤ(無道無明世界)〟である。
日本は国際テロの恐怖にどう立ち向かえばよいのだろうか。
■テロの犠牲者<交通事故死者数の理由
国際テロ対策の目的は、国民の①物理的な安全と②心理的な安心を確保することである。
テロリズムが、国民の生命・身体・財産を守れるという国家の正統性を脅かすことを狙ってくるからだ。
第一に、物理的な「安全」度を維持する=被害の程度と頻度を低く抑え込むことが必要である。
第二に重要な目的は、心理的な「安心」感の確保だ。9.11テロの犠牲者数3000人よりも、
その月1ヵ月間の米国内交通事故死者数のほうが多かった。問題は受け止められ方と安心感である。
政府が国民を守れるという民心の信頼感を突き崩し、「人混みを危険に感じさせる」のがテロリストの狙いだ。
しかし、効果的なテロ対策は国民の自由を制約し、社会経済生活にコストの上乗せを強いることもある。
専制国家では苛烈なテロ対策が採られうるが、そうした国家に住みたい人は少ないだろう。
テロ対策のポイントは人心を掴むことだ。
手製爆弾やナイフを使って数人が犠牲になるテロまで完全になくすのは、不可能に近い。
完全阻止しようとすれば、経済や社会に莫大なコストを負わせかねない。
テロに悩まされてきた英仏両国では、基本的人権の根底に「爆弾の恐怖を感じないで道を歩き、
地下鉄に乗れる自由」があると考え、捜査・諜報当局に強大な権限を与えている。
それでも、テロリストをゼロにはできない。
テロ対策の手法を選ぶときには、副作用の極小化を心がけなければならない。受け容れられるコストが
どこまでかを睨みつつ、最大限の対策をとるしかない。
■年間数十人の犠牲者で、国は滅びる
以上から、テロ対策には、次の三つの原則が必要だ。
A 絶対阻止の原則
強盗や泥棒から全市民を完全に守るのは、残念ながら不可能だ(もちろん警察は最大の努力を日々続けている)。
本来、すべてのテロ攻撃から全員を守ることもできない。
しかし、効果的な対策・防止策を求める世論の圧力は、通常の犯罪に比べてはるかに高い。
政府の正統性、信頼性にかかわるからだ。
通常の犯罪被害と比べてみよう。わが国の殺人事件は年に千件前後(未遂を含む)で、
人口比では先進国のなかで極端に少ない。ただ、遥かに多い欧米諸国でも、そのことだけでは政府は揺るがない。
しかしながら、犠牲者数十人規模のテロを毎年起こされるような政府は、
先進民主国家では持たないだろう。国の枠組み自体が攻撃されても防げない、
と見えるからだ。テロは、その抑止コストが多少高くても最大限の対策が求められる。
したがって、国際テロ対策の第一目標は「絶対阻止」だ。はじめからゼロにできないことを前提には、できない。
>>2へ続く
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