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★ミャンマー難民ロヒンギャを見殺しにするな
日本は難民を積極的に受け入れるべきだ
安積 明子 :ジャーナリスト
「難民になったロヒンギャの実態についての詳細はわからない。我々NGOでさえ、なかなかキャンプに入れない状態だ」
特定非営利活動法人難民支援協会の石井宏明常任理事は、ロヒンギャへの支援の困難さについてこう述べる。
「ミャンマー国内においても、ロヒンギャの問題は単なる少数民族の問題ではない」
ロヒンギャの現状についてこう語るのは、民主党の中川正春衆院議員だ。
野田政権時に文科相を務めた時、日本に居住する少数民族と面会するなど、難民問題に取り組んできた。
「ミャンマーには他にカレン、シャン、モンなどの少数民族がいて、その数は130以上にものぼる。
彼らは政府と対立しているが、ロヒンギャは特異な存在で、政府のみならず少数民族からも差別の対象とされている」
日本の立場も苦しいと、中川氏が説明する。「ロヒンギャに直接支援すると、ミャンマー政府から
『反乱軍への支援』と見られかねない。その一方で中国は、ミャンマー政府にも少数民族にも支援を行い、
存在感を示している」。
中国のミャンマー戦略は巧妙だ。1994年にインド洋に浮かぶ大ココ島にレーダー基地を備える軍港を建設し、
2009年にはチャウピュ港から雲南省昆明へと石油・ガスパイプラインを建設するなど軍事・経済ともに
関係を深めている。
その一方で中川氏が指摘するように、中国は国境近くのコーカン族の武力蜂起を支援するなど、
ミャンマーの微妙な国内事情に入り込んでもいる。
では日本はどうなのか。2012年12月に第2次安倍政権が発足し、最初に麻生太郎副総理
兼財務相兼金融相が外遊した先はミャンマーだった。
7~8%の高成長を遂げるこの国の経済のダイナミズムを取り込むこと、そして中国のミャンマー
進出を牽制することが目的だ。2014年には国内和解と少数民族の民生向上のため、今後5年間で
ミャンマーに100億円支援することを表明した。しかしロヒンギャに対する支援は行われていなかった。
ようやく今年6月20日、岸田文雄外相は国際移住機関などを通じてロヒンギャに350万ドルの
緊急支援を行うことを表明した。マレーシアなど周辺国に比べて多額であるが、その金額は
シリア・イラク難民支援に及ばない。
■5000人の申請に対して許可はわずか11人
また難民としての受け入れも、非常に厳しい状態だ。2014年は5000人の申請に対して許可された
のはわずか11人で、110人に人道的配慮として在留を許可したのみだ。国際的に問題視されている
ロヒンギャについても、イギリスなどの裁判では「真のロヒンギャ」と認定されれば難民認定
されるのに対し、日本では強制労働が行われても金を支払えば逃げられる場合は迫害と認定
されなかった裁判例もある。
しかし日本はかつて認定難民の他に、延べ1万1000人ものインドシナ難民を受け入れたことがある。
その実績を踏まえて、「難民受け入れの枠を広げることは可能だ」というのが中川氏の主張だ。
2010年に始まった第三国定住もある。これは、避難国に滞在する難民を移住希望先の国が
受け入れるもので、UNHCRが推奨する制度だ。
11月8日に行われるミャンマーの総選挙では、アウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟の
躍進が伝えられるものの、ロヒンギャの現状は変わりそうにない。むしろ2010年には
ホワイトカード(暫定的な身分証明書)保持者に認められていた参政権がはく奪された
との報道もあり、悪化している模様だ。
「日本政府がもう少し声をあげてくれたら、我々の活動もやりやすくなるのだが」
と難民支援協会の石井氏は溜息をつく。漂流する民族に安住の地が見つかるのは、
いつの日だろうか。(抜粋)
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