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★【正論】国家の存立縛る憲法学への疑問 京都大学名誉教授・佐伯啓思
2015.9.17 05:01
私は憲法学についてまったくの門外漢であるが、以前からよくわからないことがあった。
それはどうして大方の憲法学者が護憲を唱えるのか、という疑問である。
憲法学の一つの仕事は条文解釈である。それは現行憲法を前提として、
条文間の整合性や現実への適合性を保つというものであろう。
しかしもう一つの仕事は憲法とは何かという法哲学的考察、憲法成立に関わる歴史的考察、
さらには他国との比較憲法的視野から日本国憲法の意義や特殊性、問題点を炙(あぶ)り
だすことである。つまり無条件で現憲法を前提とするのではなく、その問題を提示する
ことも憲法学の仕事ではないかと思う。
≪政治的影響力を行使する護憲派≫
しかも、常識的に考えれば、敗戦後の占領下にあり、間接統治とはいえ、事実上、
主権を奪われた下で、連合国軍総司令部(GHQ)がきわめて短期間に作成した憲法である。
とても万全の法典と想定することはできまい。とすれば、現憲法のもつ問題を指摘することもまた、
憲法学の大事な仕事であるように私には思われる。
さらに条文の整合的解釈をめざす解釈憲法学を中心にする憲法学の立場からしても、
護憲・改憲の価値判断は直接的にでてくるものではないであろう。
憲法を前提とした条文の法理的解釈からどうして護憲というような価値判断がでてくるのであろうか。
憲法を前提とした解釈論には、憲法そのものを相対化する視点はないだろう。
にもかかわらず、憲法学者の大半が護憲派であり、しかもそのことが政治的影響力をもっている。
いや、護憲派の憲法学者たち自ら、政治的影響力を行使しようとしている。しかもそれこそが
立憲主義だという。現下でいえば、安倍政権下で進められてきた安保法制は憲法を超えた
立法権の暴走であるから、それを憲法によって抑止しなければならない、と彼らは主張している。
つまり、憲法という根本規範によって、ある政治的決定を覆すという政治的課題を遂行しようというのである。
≪憲法は無条件に優位に立たない≫
通常は、これは立法府によって成立した法律をめぐる司法判断であり、違憲立法審査である。
ところが、1959年の砂川判決をみてもわかるように、最高裁は、日米安保体制そのものは
高度な政治的課題である、として、その司法的判断を避けた(統治行為論)。
ここには重要な問題があって、国家の安全保障というような、国の存立の根底にかかわるような
問題については、憲法(法規範)と政治とを整然と区別することは困難であり、無条件で憲法が
優位に立つ、というわけではない、ということである。ある種の政治的課題について、
憲法の立場からこれを縛ることがまた政治的行為になってしまうのである。
朝日新聞が憲法学者209人にアンケートをおこなっている。その結果が朝日のデジタル版
(7月11日)に掲載されているが、回答した122人のうち、安保関連法案が憲法違反だと
する者は104人、違反にはあたらないとする者は2人だという。圧倒的多数の憲法学者が
集団的自衛権を憲法違反とみなし、安保法案に反対だという。護憲派はこれをもって
安保法案反対の重要な根拠としてきた。
普段、政府の意思決定を多数派の横暴といい、少数派の意見を尊重することこそが民主主義だ、
などといっている朝日の論調からすれば、少数派の2人こそ尊重されてしかるべきだ、
という気もするが、それはともかく、このアンケートでは自衛隊の合憲性も問われている。
違憲とする者は50人、違憲にはあたらないとする者は28人である。また憲法改正に
関しては賛成が6人、反対が99人である。 >>2へ続く
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