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★【アジアの目】独立50周年迎えたシンガポールに陰り…経済は下り坂、指導者一族に疑惑も
シンガポールの独立50周年を祝う式典が9日に行われ、半年以上にわたった一連の記念
イベントが終了した。今年は国父リー・クアンユー元首相が亡くなって初めての総選挙が
行われる予定で、シンガポール政府は、一連の独立記念イベントに加え、東南アジア競技大会
(SEA-GAMES)などを通じて「国威発揚」に努めてきた。しかし、最近は頼みの
経済も頭打ち傾向がくっきり。アジア有数の先進国となったシンガポールだが、将来、
独立50年の今年がシンガポールの頂点の年だったといわれるかもしれない。
シンガポールは1人当たり国内総生産(GDP)が5万6319ドル(約705万円)と
日本の同3万6331ドル(いずれもIMF統計、2014年)を大きく上回る驚異的な
発展を遂げた。しかし、ここに来て、こうした勢いは影を潜めつつある。
シンガポール通産省が11日に発表した今年4~6月期の国内総生産(GDP)成長率は、
前期比年率で4%減となった。前年同期比では1.8%増。これを受けて15年のGDPの
伸び率の予測幅の上限を4%から2.5%へと下方修正した。中国の不動産価格の下落、
株価の低迷など中国経済の低迷で、さらなる景気減速の影響は避けられないと、
同省は分析している。
かつて7~8%成長を続けてきたシンガポールは、東南アジア諸国連合(ASEAN)の
経済・金融・貿易のハブとして、中国がアジアで真っ先に自由貿易協定(FTA)を
結ぶなど、中国経済の恩恵を一身に受けてきた。
さらに、中国からの移民を多く受け入れることで国内での労働力確保に努めてきた。
高校レベルで優秀な人材をスカウトし、大学卒業とともにシンガポールの市民権を与える
ことで、そのままシンガポールの外資系企業に就職する中国人も多く、こうした人材が
シンガポールの高度成長を支えてきた。
一方で、バングラデシュやインド、ミャンマーなどから大量の労働者を受け入れ、
ビルや地下鉄、道路建設などにあたらせてきた。シンガポールの人口は約547万人だが、
うちシンガポール人と永住者は387万人。残り30%を占める160万人は外国人だ。
1人当たりGDPが高いのもむべなるかなだ。
経済成長が続くうちはそれでもいいが、経済成長が止まり、シンガポール国民の間に格差が
広がると、こうした外国人労働者に対する不満が頭をもたげる。とくに金融セクターなどで
働く外国人に対し、職に就けないシンガポール人の不満は高まることになる。シンガポール
人材開発省(MOM)のデータによると、15年6月時点の失業率は全体では2.0%だが、
外国人居住者の場合は2.8%、シンガポール国民は2.9%と0.1ポイント上回っている。
国民の方が失業率が高い傾向はここ数年続いている。
シンガポール政府は外国人の就労基準を厳しくするなどで、こうした国民の不満の高まりを
抑える姿勢を打ち出しているが、経済成長を続けてこられたのも、外国人労働者に多くを
頼ってきた結果だけに、制限すれば経済低迷に拍車をかけることになる。
一方、国内ではこれまで、新聞やテレビ、雑誌をすべて政府の事実上の監視下に置き、
言論・表現の自由を制限してきた。政府批判、とくにリー・クアンユー一族に対する批判は
一切許さなかった。シンガポールの政府系ファンドGICの社長はリー・シェンロン首相。
さらにソブリン・ウエルス・ファンド、テマセク・ホールディングスの最高経営責任者
(CEO)はリー首相のホー・チン夫人が務める。シンガポールの中央積立基金(CPF)
の運用をめぐる不透明性を指摘したブロガーは、リー首相の名誉を毀(き)損(そん)
したとして裁判にかけられている。
マレーシアのナジブ首相が国家ファンドから資金提供を受けたとされる疑惑が取り沙汰
されているが、国の指導者一族がファンドと直接関わり合いを持つことは縁故主義だけ
でなく、シンガポールが信奉する能力主義に対する批判を招きやすい。
かつてリー・クアンユー氏は、息子が首相になるのは、能力に基づくもので息子だから
ではないと主張したが、こうした主張が通ったのも、国民の生活が日々、豊かになって
いた最中だったからだ。経済が落ち目になれば、政権は厳しい選挙を強いられるのは
どこも同じだ。シンガポールも例外ではない。(編集委員 宮野弘之)
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