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★国際政治学の視点から読む安倍談話 各国に理解される論理構成
2015.08.20
安倍晋三首相は14日、「戦後70年談話」を発表した。3400字程度なので、
ぜひ全文を読むことをおすすめする。中学・高校の歴史の授業で習った、
日本が第2次世界大戦に突入してゆく経緯を復習するいい機会だ。
西洋列強の植民地支配がアジアに及んで、それへの対抗で日本は道を間違ったということだ。
もっとも、多くの日本人は、きちんとした歴史を学んでいない。戦後、連合国総司令部
(GHQ)が「WGIP(War Guilt Information Program)」
というプログラムによって、戦争について日本だけが悪いことをしたという罪悪感を日本人は
植え付けられていることが明らかになっている。
筆者は中学時代に、そのプログラムをある一人の教師から教えてもらったが、かなり例外的な
歴史教育を受けたようだ。実際、WGIPは存在しないとされていたが、最近になって、
その存在を示す文書が次々と発見され、今では歴史事実となっているといってもいい。
70年談話では、西欧列強も悪いことをした、日本も悪かった、そして今の中国も悪いことを
しているという、ごく普通の歴史が書かれている。
この70年談話を、国際政治学の観点から読むと面白い。いわゆる「カントの三角形」の
トーンで書かれているので、中国を除く世界各国から理解されるだろう。国際政治学では、
平和達成について(1)同盟(2)軍事力から説明する「リアリズム」の立場と、
(3)民主化(4)経済依存度(5)国際機関加入から説明する「リベラリズム」がある。
先日の本コラムで、「リアリズム」も「リベラリズム」もともに正しく、前述の5つは、
いずれも平和への貢献が大きいことが定量的に知られていることを紹介した。
なお、(3)民主化(4)経済依存度(5)国際機関加入の3点は、哲学者カントが
唱えていたことから、「カントの三角形」といわれている。
70年談話では、第1次世界大戦後にブロック経済で(4)が低下し、国際連盟脱退で
(5)がなくなったために、平和を維持できなかったと説明した。談話では直接言及
されていないが、軍部の独走を阻止できなかったことで(3)の基盤の弱さもあった。
そして、戦後の日本は「カントの三角形」をまさに率先した。アジアで最も民主化の
度合いが高い唯一の完全民主国家で、経済発展を通じて(4)を高め、各種の経済援助
などで国際貢献が高く、(5)も先導した。こうしてアジアの平和に大きく貢献した
ということを、70年談話では強調している。
そして、今国会で議論されている安保関連法案を70年談話に加えると、先日紹介した
国際政治学が示す平和の5条件をすべて満たす。安保関連法案は「リアリズム」に徹し、
70年談話では「カントの三角形」に則している。両者一体で、各方面から絶賛は
なくとも、非難を受けにくいでき映えだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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