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★【西論】中国が反対した「広島・長崎訪問」 われわれは世界の指導者に呼びかけをやめない
2015.8.7 05:00
「B29だ」。背後で男性の声がして女学生は空を見上げた。「えっ?」。
ゆっくり回転しながら下降してくるオレンジ色の球体を見た。
昭和20年8月6日午前8時15分、米軍は市民が暮らす都市に原爆を投下した。
女学生が目撃したのは、人類史上初の核兵器実戦使用の瞬間だった。
爆風で吹き飛ばされ、失神した女学生が気付いたとき、辺りは真っ暗だった。
キノコ雲の真下にいたからだ。しばらくは何も聞こえなかった。地平線が細く光り、
その光がだんだん広く明るくなった。自分の姿を見た。ほぼ全裸で皮膚は焼けただれていた。
「助けて」という声が聞こえ崩れた家屋の下から、ようやく1人の男の子を引きずり出した。
何が起きたのかも分からない。とにかく家に帰ろうと必死に歩いた。
被爆都市・広島は、あの日から70年を迎えようとしている。
■「非人道性」アピール
核を語るとき、忘れてならないのは核の脅威は、現在も決して薄らいだわけではないということだ。
現在も1万6千発以上の核兵器が存在し、五大核保有国のアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、
中国に加え、イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮も保有が確実とされる。
こうした状況に対し、広島がはたしてきた役割が、極めて大きいことはいうまでもない。
長崎とともに被爆地の地平から、核兵器のもたらす惨禍を世界に訴え続けてきた。
オランダ・ハーグの国際司法裁判所が1996年に示した「核兵器は非人道的」との判断に
力を得て、近年では「非人道性」をキーワードに、核兵器廃絶を訴えかけるようになっている。
7月には、広島市の原爆資料館と核保有国の英国議会をインターネットのテレビ電話で結び、
被爆者が上院・下院議員らに、自らの体験を証言する催しが行われた。
菅義偉官房長官は「非道を後世に伝えていくという意味で、今回の取り組みは意義がある」
と評価した。小さな一歩かもしれない。だが、被爆地の継続的な「核兵器廃絶」の声に耳を
傾ける人が着実に増えている事象の一つと受け止めたい。
■疑心暗鬼を取り除け
今年4月27日から5月22日(現地時間)にかけ、米ニューヨークの国連本部で核拡散
防止条約(NPT)再検討会議が開かれた。約190カ国が加盟し、5年に1度、世界の
核軍縮の進展度合いを検証して次の5年間の取り組み目標などを決める会議だ。
広島市出身の岸田文雄外相は、世界各国の指導者や若者に広島、長崎への訪問を呼びかける文言を、
最終文書に盛り込むよう提案したが、中国の反対で削除された。さらに、会議終盤に中東の非核地帯
構想をめぐる議論が重点課題に急浮上し、最終文書案そのものが採択されなかった。
一見、核廃絶の困難さが浮き彫りになったように見える。だからこそ、私たちは、会議に出席した
広島市の松井一実市長の、核兵器問題解決への糸口に「手応えを感じた」という発言に注目すべきだろう。
「議論の経過の中で、核兵器の非人道性に半分以上の国が賛同する局面があった。
(核兵器廃絶という)目標は間違いない。ただ国際社会は足踏みをしているだけだ」(松井市長)。
松井市長はアメリカ代表部の要人と面会。今年4月には、広島を訪れたロシアのアファバシエフ
大使とも話をしている。核兵器の95%を保有する米ロとの対話に基づいた「核兵器を持っている
国々は、互いに疑心暗鬼になっているのではないか。その疑心暗鬼を取り除く努力をしなければ、
物事は前に進まない」という指摘は重い。 >>2へ続く
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