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★タガログ語児童が増加 外国人多様化、支援に追われる学校
2015年8月3日 夕刊
日本で学ぶ外国人の子どもたちの出身国が多様化し、教育現場が対応を迫られている。
ブラジル人が減少傾向にある一方、フィリピン人や中国人などのアジア系が増加。
全国で最も外国人の児童生徒が多い愛知県は、ポルトガル語を使うブラジルの子ども
向けに支援態勢を充実させてきたが、フィリピン人向けの支援員の確保や資料作り
などに追われる。
「キヲツケ。レイ」「オハヨウ、ゴザイマース」。豊橋市岩田小学校で来日まもない
子どもたちが学ぶ特別授業は、日本式のあいさつで始まる。
二~五年生十二人のうちフィリピン人が九人、ブラジル人が三人。この日は「大きい、小さい」
など比べる言葉を学んだ。「大きいのはどっち?」。松波良宏教諭(43)が大小三足の靴を
見せながら日本語でゆっくり問い掛けると、何人かが「こっち」と声を上げた。
フィリピン出身の女性語学相談員が児童の間を回りつつ、日本語がよく分からない子に
タガログ語で意味を伝える。「子どもと母国語でやりとりができる相談員の存在は欠かせません」
と松波教諭は話す。
岩田小では全校児童七百六十八人のうち日本語を母語としない外国人が百五十一人(五月一日現在)。
ブラジル人とフィリピン人がともに六十二人を占める。校区内に大手派遣会社の寮などがあり、
ブラジル人の子どもが多かったが、二〇〇八年のリーマン・ショックや一一年の東日本大震災
以降は減少し、フィリピン人が増えている。
ブラジル人の児童や保護者向けに培ったノウハウはなかなか通用しない。「例えばフィリピン
ではプールの授業がなく、保護者への説明が難しい」と松波教諭。ポルトガル語の保護者向け
資料にタガログ語を併記するなど対応に追われる。
文部科学省の一四年度調査では、愛知県の外国人児童生徒数は、前回一二年度調査より
約五百人多い約六千四百人。ポルトガル語系が約四十人減の約三千四十人で、タガログ語系は
約二百六十人増の約千三百人。中国語、南米のスペイン語系も増えた。外国人の子が在籍する
小中学校は約三十校増の六百七十校。岐阜、三重両県でもポルトガル語系が減り、
タガログ語系が増加、特に三重県ではスペイン語系も伸びている。
愛知県教委は本年度、外国人の子どもたちの指導のために加配する教員を五十三人増員。
小中学校に派遣する語学相談員も六人増やし、新たにタガログ語枠を二人設けた。
県教委の担当者は「人を増やしても追いつかない」と現状を説明する。独自に語学相談員を
配置している豊橋市教委の担当者は「ブラジル人の場合、支援組織や核になる人がいたが、
ほかはそうした組織や核になれる人がいない」と支援する人材確保の難しさを指摘する。
(広瀬和実)
◆家族呼びフィリピン人集中
東海地方で近年、フィリピン人が増えている背景には、製造業の安価な労働力として
需要がある上、来日した人が家族や友人などを呼び寄せる流れがある。
名古屋外国語大の津田守教授(フィリピン社会論)によると、一九八〇年代半ばから
十年間は、フィリピン人の来日は「興行」ビザが多かった。この十年は、戦前に同国に
渡った日本人の子孫が、日系人に与えられる「定住者」ビザで来るケースが増えている。
リーマン・ショック後、製造現場では、ブラジル人より低賃金のフィリピン人を多く雇用。
知人を紹介するとボーナスを支払う派遣会社もあり、三重県松阪市など、
先にフィリピン人が来ていた地域への集住が加速した。
最近はフィリピン国内でも生活に困窮する地域から来る人が多く、日本語だけでなく
生活指導も必要という。愛知淑徳大の小島祥美准教授(多文化共生論)は「両親が生活基盤を
築いた後に子どもを呼び寄せ、親子で暮らすこと自体が初めてで生じる問題もある」と指摘。
柔軟に支援態勢を整える必要があると訴える。
小島准教授は「外国人の子が日本で能力を発揮できる環境をつくることは、国内にいながら
異なる価値観を認められるグローバル人材の育成にもつながる」と、外国人児童生徒への
支援が日本人にとっても有用だと説く。
(戸川祐馬)
URLリンク(www.chunichi.co.jp)
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