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★【安保報道】朝日新聞にパブリックエディターらが苦言 「正確な情報を」(上)
楊井人文 | 日本報道検証機構代表・弁護士
2015年7月1日 18時49分
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朝日新聞6月26日付朝刊(上)、27日付朝刊(下)
先週、朝日新聞の紙面上に、安保報道に苦言を呈する外部識者のコラムが相次いで掲載された。
ジャーナリストの池上彰氏は、6月26日付朝刊に掲載された「新聞ななめ読み」で、安保法制に
関する国会の参考人質疑で、朝日が元内閣法制局長官の発言の一部を正確に伝えず、実際と
異なる印象を与える報じ方をしていた問題を指摘した。翌日には、朝日が4月に新設した
パブリックエディター(PE)の小島慶子氏が、ドイツ軍の「集団的自衛権の事例」について
報じた昨年6月15日付記事を取り上げ、「適切な説明を省き、集団的自衛権の行使で死者が
出たと印象付けようとしたと読者に不信感を持たれて当然」と論評した。この2つのケースは
共通の問題点を浮き彫りにしている。読者に自ら判断してもらうために正確な情報を提供
するのではなく、読者がメディアと同じ意見に導かれるよう都合よく情報を提供しようと
する報道姿勢である。それぞれのケースを具体的にみてみよう。
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朝日新聞6月23日付夕刊1面トップ
池上氏が取り上げたのは、6月23日付夕刊1面トップの「元法制局長官 解釈変更批判
集団的自衛権『国民 危険にさらす』衆院特別委で2氏」。衆議院特別委員会の参考人質疑で、
元内閣法制局長官である阪田雅裕氏と宮崎礼壹氏が安保法制の合憲性について意見を述べた
ことを報じたものだ。この記事では、政府が集団的自衛権を限定的に容認する解釈に変更
したことについて、阪田氏が「憲法を順守すべき政府自ら憲法の縛りをゆるくなるように
解釈を変えるということだ」「国民を危険にさらす結果しかもたらさない」と述べたこと
を報道。しかし、阪田氏が「従来の憲法解釈と論理的に全く整合しないものではない」と
一定の理解を示していたことに全く触れていなかったため、阪田氏が「全面的な批判」
をしたように読めるような記事になっていたと池上氏は指摘したのである。
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朝日新聞6月24日付朝刊3面
朝日は翌日朝刊で2人の元内閣法制局長官の発言を詳しく報じていたが、そこでも改めて
阪田氏が全面的な批判をしたかのように報じ、従来の憲法解釈との整合性に理解を示した
発言は記事の最後で小さく紹介しただけだった。こうした朝日の報道のしかたについて、
池上氏は「社としての意見はあるにせよ、記事が、それにひきずられてはいけません」
とクギを刺したのである。池上氏は、「阪田氏の発言は新聞によってニュアンスが異なり、
朝日、毎日、日経、読売の順に、発言は厳しいものから緩やかなものへと変化」しており、
「この並びは、安全保障関連法案に対する社の態度の順番とほぼ一致」しているとも
指摘したが、このうち正確性の観点から最も問題があるのが朝日の記事だった。
池上氏が指摘しなかった、より重大な問題も潜んでいた。阪田氏は参考人質疑で、
憲法解釈の変更が許される余地があるとして、(1)新しい解釈が法論理的に成り立つ、
(2)解釈変更の理由がきちんと説明できる、という2つの条件を挙げていた。朝日は
24日付記事で、阪田氏が1つ目の条件について「『従来の政府解釈の基本的な論理の
枠内ではなく、基本的な論理そのものを変更するものだ』と述べ、法論理的に成り
立たないと結論づけた」と報じたのである。
小泉内閣で長官を務めた阪田雅裕氏は、安倍晋三首相が「日本の石油の8割が通る」
と重要性を挙げて、集団的自衛権の行使例と想定する中東・ホルムズ海峡での機雷
除去に疑問を示した。
阪田氏は、政府の憲法解釈の変更が許される二つの条件として、(1)新しい解釈が
法論理的に成り立つ(2)解釈変更の理由がきちんと説明できる―を挙げた。
(以下略)
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