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★【阿比留瑠比の極言御免】変わる世論とご都合主義
2015.7.2 06:00
人も国際情勢も世論も移ろい変わりゆく。そんな世の無常を説くかのように菅義偉
(すが・よしひで)官房長官はこのところ、平成4年6月の国連平和維持活動
(PKO)協力法成立時と現在の国民意識の違いについて、繰り返しこう指摘している。
「当時、憲法学者の8割を超える方が反対だったが、今日では約9割の国民から
PKOに理解をいただいている」
確かに、同年7月の朝日新聞の世論調査では、PKO参加のための自衛隊海外派遣に対し、
憲法上「問題がある」と答えた人が58%に上り、「問題はない」の26%の倍以上だった。
PKO協力法成立時といえば、菅直人元首相が6月13日の衆院本会議で、
「PKOと自衛隊という存在を結びつけることは、憲法上の制約を含めて困難」と主張して
制限時間を過ぎても延々と演説を続け、衛視に演壇ごと引きずり下ろされたのも印象的だった。
その菅氏も首相時代の23年3月の防衛大学校卒業式の訓示では、堂々とこう訓示している。
「諸君が培った技能をぜひこうした(PKOなどの)活動で発揮してください。
それが日本の国益につながる」
あのときの反対、違憲論はいったい何だったのかと思うと少し腑(ふ)に落ちない。
とはいえ、国民の意識や判断は、それだけその時代の空気や社会情勢に左右されるものなのだろう。
現在、国会で審議中の安全保障関連法案をめぐっては、各種世論調査で合憲ではなく
違憲だとみる国民の方が大きく上回っている。これも時の流れとともに変遷していくのだろうか。
もちろん、国民意識が変わるのは別に悪いことではない。それは社会の成熟や
学習効果を表すものでもあるからだ。安全保障問題に関してだけではなく、
最近は歴史問題でもいろいろと大きな変化がみられる。
読売新聞が5月下旬に実施した世論調査(1010人回答)では、過去の歴史についての
韓国への謝罪は「十分だ」との答えが76%に達した一方で、「不十分だ」は17%にとどまった。
もっと顕著な数字が出たのが、日本テレビが6月中旬に実施した世論調査(1008人回答)だ。
韓国政府が日本に謝罪と賠償を求めている慰安婦問題について、これまでになく明確な意思が
示されたのである。
5つの選択肢のうち、「これまでの対応で十分であり、改めて謝罪も賠償も必要ない」
との答えが最も多く36・8%に上ったのに対し、「慰安婦だった女性に対し、国として
改めて謝罪と賠償をした方がよい」はわずか3・9%だったのだ。これは25人に
1人もいない計算になる。
さらに、「慰安婦を組織的に強制連行した証拠はなく、国際社会の誤解を解くため、
さらに日本の立場を主張する」という積極策も18・2%の人が選んだ。
根拠もなく慰安婦募集の強制性を認めた5年8月の「河野談話」の虚構性が明らかになり、
慰安婦問題の実態がだんだん周知されるにつれ、国民の理解も深まったのだろう。
20年前であれば、こうした調査結果は考えられない。
野党や一部メディアは、安保関連法案に否定的な世論が強いことをもって、
政府にその取り下げを迫っている。それならば同時に、絶対に韓国に謝罪や賠償を
してはならない、それが国民の声だと主張しないと、ご都合主義といわれても仕方あるまい。
(論説委員兼政治部編集委員)
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