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★【日本の解き方】中国とFTA結んだ韓国は安全保障と自由貿易で股裂き 日本への影響は限定的
2015.06.06
中国と韓国の両政府は自由貿易協定(FTA)に署名した。農産物の自由化比率は過去の
FTAで最低水準といわれるほか、自動車も関税撤廃対象から外すなど、政治的な成果を
優先したとの見方もある。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や日中韓FTAの交渉
への影響はあるだろうか。
中韓FTA協定が発効すれば品目数ベースで中国は91%、韓国は92%の関税を20年
以内に撤廃する。輸出額と輸入額を合算してみれば、韓国にとって中国は最大の貿易相手国で、
中国にとって韓国は3番目に大きい貿易相手国だ。この両国間でFTAを締結できたのであるから、
両国にとってそれぞれメリットがあることは間違いない。
ただし、その効果は限定的である。韓国にとって中国は最大の貿易相手国といっても、
そのシェアは全貿易額の2割程度だ。中国にとって韓国は3番目に大きい貿易相手国と
いっても、そのシェアは全貿易額の7%程度に過ぎない。
たしかに、韓国は日本に先駆けて中韓FTAで中国での関税撤廃など貿易自由化の恩恵を
受けるが、日本と競合する自動車は自由化対象外になった。また、中韓の関税撤廃の
スピードもゆっくりなので、短期的に韓国の中国への輸出が急増するといったことは
考えにくい。中韓FTAによって日本の受ける影響はかなり限定的になるだろう。
中韓FTAの背景は複雑だ。まず、経済要因として、中国と韓国の立場だ。
実は、中国にとって、最大の貿易相手国は米国、2番目は日本であり、
両国のシェアは2割程度である。中国は本来なら日米主導のTPPへ参加したいはずだ。
ところが、TPPは中国抜きで進められている。そこで、中国は韓国を狙ってきた。
一方、韓国にとって、2番目に大きい貿易相手国は米国、3番目に大きいのは日本であり、
両国のシェアは全貿易額の2割近くになる。ただし、米韓FTAは既に行われている。
さらにTPPが発効すると、韓国は日本と競合する北米市場で苦しい立場になる。
そこで、中国とのFTAに活路を見いだしたのだ。
政治的には、中国が日米に対抗するために韓国を巻き込み、韓国はそれに応じた形だ。
ただし、この韓国の戦略は功を奏するのだろうか。自由貿易圏は、安全保障圏との関係が
密接というのが、これまでの国際政治経済の事例だ。中国の海洋進出は凄まじく、
以前に本コラムでも書いたが、南シナ海での国際社会を無視した傍若無人ぶりはいかがなものか。
韓国は安全保障面ではこれまで日米側だったが、自由貿易圏では中国側に片足を突っ込んで
いる格好で、股裂き状態になるのではないか。韓国にとって、中韓FTAはそれほどメリット
が大きいとは思えないが、政治的な中韓の結束を強調した形になっている。
中韓FTAは、結果として、中韓抜きのTPP交渉を加速させるだろう。
その場合、日中韓FTAはかなり後回しになるだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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