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★【アジアの目】どうするロヒンギャ族難民 困惑するマレーシア、インドネシア 背後に難民ビジネス
2015.6.4 11:00
「いったい、われわれにどうしろと言うんだ」。マレーシアの政府高官は、
ミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャ族と、増え続けるバングラデシュ人の
ボートピープルへの対応について、AP通信の取材に、いらだちを隠さなかった。
イスラム教を国教とするマレーシアは、これまで多くのロヒンギャ族の難民を受け入れて
きたが、余りにも多くのボートピープルが押し寄せるため、ここに来て方針を転換、
上陸させずに送り返すようになった。これに対し、欧米や国連など国際社会からの
批判が強まっていることへの不満だ。
■増える経済難民
インドネシアとマレーシアは20日、約7000人のボートピープルの収容を表明したが、
あくまで、第三国定住か母国への送還かが決まるまで1年間の臨時措置に過ぎない。
マレーシアのアニファ外相は会議後、「東南アジア諸国連合(ASEAN)の問題ではなく、
国際社会の問題だ」と述べ、国際社会からの支援と協力がなければ、問題は解決できない
との立場を強調した。
29日にはタイのバンコクで関係国を招いて、ボートピープルの問題を話し合う国際会議を
開くが、会議には当初、出席を拒んでいたミャンマーも20日、参加を表明した。
しかし、あくまで会議でロヒンギャ族という単語は使わないという条件つきだ。
ロヒンギャ族は「世界で最も抑圧されている民族の一つ」とされるが、ミャンマー政府は
ロヒンギャ族をバングラデシュからの不法移民としている。仏教徒が多いミャンマー
国民の多くも同様の認識だ。
11月の総選挙を控え、国民の反ロヒンギャ感情をあおるような約束を会議でするわけに
いかないのだ。普段、人権擁護を訴えているアウン・サン・スー・チー氏でさえ、
支持者の反発を恐れ、ロヒンギャ問題では口をつぐむのも、そうした国民感情があるためだ。
問題はミャンマーに限らない。バングラデシュ政府の責任も重い。今やマレーシアや
インドネシアに押し寄せるボートピープルは、ロヒンギャよりもバングラデシュからの
経済難民の方が多いという。
インドネシアなどに上陸できたボートピープルは、ロヒンギャ族なら収容センターに、
バングラデシュ人なら本国へ送り返される。だから、救出された多くの人々は
ロヒンギャを名乗る。ロヒンギャなら、送り返されることはないからだ。
インドネシアやマレーシアがボートピープルの受け入れを拒むようになったのも、
認めればバングラデシュからの移民が一気に増える懸念があるからだ。
■豪州が先鞭
ボートピープルが急増している背景には、彼らを狙った「難民ビジネス」が活発化
していることがある。ロイター通信によると、タイの業者がミャンマーから人を受け入れ、
企業などに送り込めば、1人当たり約1万バーツ(約3万6000円)のもうけになる
という。密航船の通過や上陸について、お目こぼしを頼むため、軍や警察への賄賂は
欠かせない。さらに船賃や労働ビザの取得費用、その他の書類の費用などを含めると、
1人当たり数万バーツに上る。それだけの金が動く巨大ビジネスだ。
最近、ボートピープルが急増したのも、タイやマレーシア当局が取り締まりを強化
したことで、摘発を恐れた業者が難民らを置き去りにし、船から逃走したためだ。
「難民ビジネスそのものを成り立たせないようにすべきだ。それには、船を海上で押さえ、
上陸させずに送り返すことだ。われわれのやり方は間違っていない」として、
各国の動きを歓迎するのが、オーストラリアのアボット首相だ。ボートピープル対策で
先鞭を付けたとの自負があるようだ。
オーストラリアは、ボートピープルの流入を防ぐため、海軍を動員。収容したすべての
ボートピープルをナウル共和国に建てた収容施設に送る。審査後、本国送還か第三国
への定住を選択させ、本土上陸を一切認めない。国際的な批判が強かったが、
効果は上がっている。29日のバンコクでの会議にはオーストラリアからも出席する。
ASEANは内政不干渉が原則だが、「難民ビジネス」のような国境を越えた犯罪が
増えることは確実だ。原則にこだわらず、厳しい対応を取ることが迫られている。
(編集委員 宮野弘之)
URLリンク(www.sankei.com)