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★私はここに～性的マイノリティーの今（３）「いない」が前提の教室 （5/2111:00）
「性的マイノリティーは成人の７・６％いる」とする電通の調査結果が４月、発表された。
中学校や高校のクラスに当てはめれば１クラスに２、３人はいる計算だ。
◇笑えないジョーク
「見えないから『いないもの』にされている。本当は、性的少数者はそこら中にいるのに」
性的マイノリティーであることを公言し、インターネットなどで当事者発信をしている
浜松市の高校２年杉田さん（１６）は、学校が抱える問題をこう指摘する。
当事者の多くは中学校や高校で本当の自分に気付くが、閉ざされた学校生活で公言しない。
それゆえ、教師やクラスメートのちょっとしたジョークに傷つき、自己否定を重ねている。
中学生の時、女の子を目で追っている自分に気付き、母親に「私はレズビアン（女性の同性愛者）
だと思う」と伝えた。今は自分の性が女性かどうかも分からない。学校で恋愛話をする時、
「お店にかわいい女の子がいた」と話す杉田さんを、同級生は差別することなく「個性」と
受け止めてくれる。むしろ、気になるのは一部の先生の言動の方だ。
授業で導体でも絶縁体でもない半導体を説明するのに「オカマ」と例えたり、２人で机を寄せあって
教科書を見ている男子に「あ、そういう関係（ゲイ、同性愛者）だったの」と言ったり。
「隣で笑っている生徒の中に、ゲイの子がいるかもしれない。ゲイはクラスにいないだなんて、
勘違いしないでほしい」
杉田さんは昨年５月、「レインボーエデュケーション」と題して学校に向けた提言の発信を始めた。
１人きりの活動は徐々に浸透し、同年代の性的マイノリティーから連絡を受けるようになった。
告白して家族との関係を悪化させた子や「本当の自分が分からなくて死にたくなる」という深刻な
相談もあれば、恋愛話に花が咲く子も。「同じ目線で語り合えて良かった」と思う半面、理解者に
巡り合えないまま、１人で悩む子に活動が届かないのではと焦りも募る。自分が公に提言を続けて
いく使命を感じている。
◇自己否定の原体験
高校の保健体育の教科書にある「思春期になると、異性を意識し始める」という記述に違和感を覚える。
「一言でいいから『同性愛も、誰も好きにならない人もいる』って付け加えてくれませんか」。
それが事実だからと杉田さんは教師に頼んだが、「多数派の生徒の混乱を招くし、言う時間もない」と断られた。
教科書での性的マイノリティーの位置付けに関する論文を発表した静岡大学の松尾由希子准教授は
「今の学校のカリキュラムは男女二元論、異性愛主義。性的マイノリティーは『いないもの』と
されていることが、当事者が自己否定するきっかけになっているのでは」と指摘する。
文部科学省は４月、全国の教育委員会に性的マイノリティーへのきめ細かな対応を求める通知を出した。
学校は変化の兆しを見せているが、ある教育関係者は「生徒はよほど信頼できる教師にしか告白しない
だろうし、言われた教師も他言しない。配慮が求められるような具体例が公になることは珍しい」とみる。
当事者の存在を肯定できる環境をつくるにはまず、水面下で沈黙を守る生徒たちの状況をどうつかむかが課題になる。
＜メモ＞「性的マイノリティー」という言葉が初めて教科書に載ったのは、２００３年度の高校の家庭科とされる。
政治動向やニュース、テレビドラマなどの影響で社会的認知は広がっているが、最新の学習指導要領では具体的に
触れていない。教科書への記載は「発行者の創意工夫に任されているのが現状」（松尾由希子静岡大准教授）という。
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