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★増税の影響「なかったこと」にしたい日銀総裁や学者 誰も口にしないお寒い現状
2015.05.12
日銀が2%のインフレ率目標達成時期について「2016年度前半ごろ」と、
事実上後ろ倒しにした。その理由について、黒田東彦(はるひこ)総裁は、昨年4月の消費増税の
直接的な影響について語らず、ほとんどのマスメディアも言及しない。一体なぜなのだろうか。
金融政策決定会合の正式文書における物価の見通しでは、日銀の見方がぶれてきている。
13年4月4日の異次元緩和以降、「プラスに転じていく」だったが、13年8月8日から
「プラス幅を次第に拡大していく」、14年1月22日から「暫くの間、1%台前半で推移する」
と強気だった。
ところが、消費増税の影響が明らかになると、14年10月31日に追加緩和を行い、
11月19日には「当面現状程度のプラス幅で推移する」と下方修正した。
15年1月21日には「エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小する」、
3月17日からは「エネルギー価格下落の影響から、当面ゼロ%程度で推移する」と、
短期的な理由を原油価格下落に求めている。
黒田総裁が「消費増税があったので需要が落ち込んだ」と言えないのは、黒田総裁自身が
消費増税に積極的で、「消費増税の影響は軽微である」と言っていたからだ。
実際には影響は軽微どころではなく、黒田総裁の見通しは大外れであったが、
それを認められないのだ。そこまでして消費増税を進めたい黒田総裁は、日銀総裁というより、
まるで古巣の財務省職員のようだ。
マスメディアも、消費増税に賛成した大手紙などは、今さら消費増税の影響が大きかったとは
言えない。だから、黒田総裁と同じ穴のムジナである。マスメディアの場合には、下手に質問して、
黒田総裁の感情を害したら、その後の取材活動にも影響しかねないので質問をセーブする気持ちもあろう。
そもそもほとんどのマスコミは財務省のいいなりで、新聞は軽減税率も念頭にあって
財務省を逆なでにするような質問もしにくいのだろう。
こういう場合には、学者などの知識人が問題を指摘しなければいけない。
しかし、学会でも、財政政策に関して、「消費増税の影響」という話題はさっぱり盛り上がらない。
というのも、日本の代表的な一流学者を含む多くの学者が「影響なし」と主張していたものだから、
議論にならないのだ。
多くの学者にとって、消費増税の影響は「なかったこと」にしてもらいたいのだ。
うっかり悪影響について話したら、巡り巡って自らの師匠の批判になったりするから、
誰も口にしない。なんともお寒い現状である。
ついでにいうと、最近では、金融政策について「量的緩和政策の検証・評価」という題でやっても、
まともな学者は討論者にならないため、学会運営で困っているらしい。多くの学者にとって、
リフレ政策論争は「なかったこと」にしたいということなのだ。
テレビやネット上では無知な敗残兵がわずかに残っているが、さすがにデキる学者は逃げ足は速い。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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