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★歴史マニアうならせる安倍首相の見事な米議会演説
2015年05月01日08:38 石井 孝明
安倍晋三首相が日本時間30日未明、日本の首相として初めて米上下両院合同会議で演説した。
題名は「希望の同盟へ」(外務省訳)。大変考えられた、すばらしい演説だったと思う。
私は、安倍首相の経済政策は評価していないが、外交分野の「チーム安倍」の能力の高さは
発足直後から注目してきた。(コラム「安倍首相の外交スピーチが素晴らしい」)
今回もスピーチライターの谷口智彦内閣参与、参謀役の谷内正太郎内閣国家安全保障局長が
安倍首相と図りながら、適切な配慮をしたのだろう。安倍首相は海外メディアで極右と誤った
描写がされている。この演説を契機に、良いイメージが広がってほしいと期待している。
演説は多岐な問題に触れたが、その中で米国軍事史について素人マニアとしての私が話しやすい
「戦没者の慰霊」に焦点を当て、解説したい。アメリカ人の好きそうな「ツボ」を押さえ、
非常に練られている。
■「ゲティスバーグ演説」でつくられた米国の慰霊の形
南北戦争(1861-1865)は今も米国に影響を与える。約60万人の死者を出し、当時の米国社会に
大きな傷を残した。その死を生きる人々が受け止めるロジックが、戦争を勝利に導いた大統領
リンカーンのゲティスバーグ演説だ。日本人には「英語教材」にすぎないが、米国では国の形の
一部に影響を与えた重要な文章になっている。
どの国でも、戦争における戦没者の慰霊の論理が国を維持するために必要だ。日本では戦前は
靖国神社で神になるという論理が採用された。米国でも、この演説の論理構成が死者と向き合うために、
繰り返される。この演説は、激戦地での国立墓地の献納式で行われた。引用しながら、構成をまとめよう。
1・戦った人の自己犠牲への顕彰。敵への悪意は強調しない。
演説から「私達はこの大地を清められないのです。生きる者も、死せる者もここで奮闘した勇敢な
人々がすでにここを神聖化してしまいました。そこに、なにかを足したり取り除いたりするわれわれの
貧弱な能力など、それにまったくおよばないものだからです」。
2・死の意味の定義
同「われわれ生きる者の使命とはむしろ、ここで戦った人々がこれまで気高く前進させた、
この未完の仕事に身を捧げることなのです」
3・未来への提言
同「そして国民を、国民自身の手によって、国民自身の利益のための政治を行うこと
(世界初の民主主義体制である米国)を、この地上から消え去さらせはしないためなのです」
ゲティスバーグ演説は練り込まれ、とても感動的だ。米国は、世界で自国の行動を傲慢に肯定する
面があるが、良心的な思想の流れとしてこの演説の論理構成は頻繁に米国人の行動や見解に現れる。
もちろん戦争の受け止め方は人それぞれだ。それを乗り越えられるかは、千差万別の個人の問題だろう。
しかし社会全体として見た時に、このリンカーンのロジックは感動的であり、人々が合意しやすいものだ。
リンカーンは南北戦争を「反乱」と規定。そして彼の優しい個性もあったが、敵を激しく糾弾せず、
和解を常に唱えた。この倫理的高潔さは、今みてもすがすがしい。その前も後も、戦争は相手を
罵る醜いものばかりだからだ。
今年は南北戦争終結、そしてリンカーンの暗殺から150年の節目の年だ。米国訪問ではオバマ大統領が、
安倍首相をワシントンのリンカーン記念堂に案内した。オバマ大統領が08年の選挙で勝利した後で、
ホワイトハウスに持っていったと話題になった本がある。ハーバード大の歴史学教授のドリス・グッドウィン
教授のリンカーン政権を描いた「ライバル達のチーム」(邦訳は「リンカン」)だ。これは、スピルバーグの
映画「リンカーン」の原作にもなり、とても面白い本だった。リンカーンの存在感は今も大きい。
>>2へ続く
URLリンク(agora-web.jp)
参考 外務省サイト、全文
米国連邦議会上下両院会議における安倍総理大臣演説
「希望の同盟へ」(2015年4月29日(米国東部時間))
URLリンク(www.mofa.go.jp)