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★【正論】国家主権意識の真の再生を願う 東京大学名誉教授・小堀桂一郎
2015.4.23 05:02
大東亜戦争停戦から70年の記念年である本年は、本紙の紙面で見ても、年頭から何かと
その記念的意味が話題となつてをり、歴史的回顧とその再検討を試みる諸種の企画の充実ぶりに、
国民一般の現代史への関心の深さが窺(うかが)はれる。
あの戦争の国際法上の真の意味での終戦であつた昭和27年4月28日の対連合国平和条約
発効の日から数へるならば、米軍による軍事占領から我が国が解放されてより63年が経過し、
やがて数日後にその記念日を迎へることになる。
《主権回復記念日の意義広め》
一昨年、平成25年のこの記念日には、政府は自らの主唱により、「主権回復・国際社会復帰を
記念する式典」を憲政記念館で開催、天皇・皇后両陛下の臨御を仰いで盛大な祝典を挙行した。
これは昭和27年当年の催しから60年の空白を置いて初めての開催であり、この記念日の意味を
重視する民間有志一統は、政府のこの壮挙を深く多としたものであつた。
然(しか)しながら昨平成26年には、一統の期待に背いて、政府による記念式典第2回の開催と
いふことはなく、この日の歴史的意義を広く国民に想起してもらふべき記念集会の開催は、
再び民間の一任意団体たる「主権回復記念日国民集会実行委員会」のみに委ねられた形で
了(おわ)つてしまつた。
それのみならず、平成23年8月には、自民党の若手議員達が中核となつて結成した
「4月28日を主権回復記念日にする議員連盟」が、祝日法の一部改正といふ形を以て
この記念日の法制化を議会に提案する、といふ具体的な動きまで見えてゐたものであつたが、
いつかその動きは影が薄くなり、聲(こえ)も細くなつてしまつた様である。
もちろんこの記念日の法制化は既に度々述べたことだが、一つの方便に過ぎず、之を以て
目指してゐる本来の目標は、独立主権国家の尊厳といふ意識の確立であり、それは現政権が
最大の政策目標として掲げてゐる「戦後体制からの脱却・日本を取り戻す」といふ国民運動の
思想的大前提である。
《拉致問題解決に欠かせぬ視点》
現に国際関係の上での多事多難の状況に迫られながら、国内に於(お)いては、自主憲法の制定
といふ正に70年来の国家的懸案をここ2年ほどの内には実現したいとの要請が急速に高まりつつある。
この目標達成のためには、右に言ふ大前提としての国家主権の確立といふ理念が国民の意思統一の
核として共有されてゐなければならない。
更に、これも全国民にとつての焦眉の課題である、被拉致同胞を一人残らず救出・奪還するための
北朝鮮との交渉について思ひを及ぼしてみよう。元来我が国の領海領土内に不法に侵入し、
無辜(むこ)の住民を暴力沙汰を以て誘拐するといふ行為自体が、人権の蹂躙(じゅうりん)
であると同時に、重大なる国家主権への侵害である。従来我が国の当路者の間には、被害者の
個人的不運と不幸といふ観点が先に立つて、国家主権への侵害といふ厳しい認識が欠けてゐた
如(ごと)くである。
この意味での事態の重大性への認識が不十分である時、我が不運なる被拉致同胞に向けられて
ゐる国際社会の同情と支援の気運にすらも、当事者たる日本国政府が不熱心でゐるとの不利な
印象を与へかねない。この問題については、人道問題であるより以前に、国家主権の侵害事例
として重大視する視点が是非必要である。 >>2へ続く
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