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★今こそ、北方領土四島一括返還 最後のチャンスだ
2015年04月17日(Fri) 中村繁夫 (アドバンスト マテリアル ジャパン社長)
初めて会ったロシア人から「中村さんですね」と言われて驚いた。
続けて「私の妻は『馬場真一』の娘です」と聞いてもっと驚いた。世界最大のニッケル生産企業の
「ノリリスク・ニッケル」調査部長のDenis Sharypinさんから2月に初対面の挨拶をされたときの話だ。
馬場君のお葬式の時にミニスカートにルーズソックスを穿いていたあの高校生の娘さんがデニスさんと
結ばれたのだから「縁は異なもの味なもの」である。
馬場真一君とは私の前職(蝶理時代)の同僚である。彼は旧ソ連・ロシア貿易の蝶理のスーパースターで
次々と新しいビジネスを開拓したが1998年に志半ばで帰らぬ人となった。彼は物資や化学品の輸出を担当し、
モスクワにも10年間以上の駐在をして次のロシア貿易を背負って立つ人材であった。
日本の傘や雑貨や水耕栽培プラントの輸出を成功させたのも彼の功績である。
馬場君の発想はユニークで、当時のガスプロム(世界一の天然ガス国営企業)のキーパーソンとの
大口取引に注力していた。ロシアの天然ガスのパイプラインは、あまりメンテナンスはしないから
馬場君はそこに目を付けた。日本の塗料を塗れば錆止めになるばかりではなく長持ちするので、
そこが馬場君の売込みのツボであった。天然ガスのパイプに使う塗料の大口商談が成立する
あと一歩という所で病魔に侵されて他界したのである。
神戸外大時代は野球選手でスポーツ万能だった。癌が進行しているにもかかわらず毎月のように
ゴルフに行っていた。「肩の力が抜けて良いスコアが出た」と屈託のない笑顔を見て心強く
思っていた矢先の突然の知らせであった。
・困った時に助ける事こそ真の友好だ
さて、現在のロシア経済は多重苦に喘いでいる。多重苦とは通貨の暴落と金利の高騰と
原油安に加えて欧米(G7)からの経済制裁である。通貨の暴落は昨年モスクワに来た時には
1ドルが約30ルーブルだったのが現在は約60ルーブルだからルーブルの価値が約半分になった。
私のモスクワの定宿が一年前は300ドルだったのが今回は120ドルになっていた。
金利の変化は一般企業への貸出し金利は一年前が10%前後だったのが現在は25%前後まで
高騰しているから企業は資金ショートのために正常な生産に支障をきたし始めている。
去年の8月に100ドルだった原油価格が今や50ドルを切るところまで来ている。
今回のロシア訪問で面白い話を聞いた。生活が困窮しているにもかかわらずトヨタの高級車
レクサスが飛ぶように売れているというのだ。インフレに対抗するために高級車を買い占める
発想がロシア人らしい。しかも経済制裁を受けているドイツからの輸入は控えているのである。
日本人は北方領土問題の為にロシア人を過剰に誤解しているが、ロシア人は日本人が大好きである。
昨年のウクライナ紛争の影響から欧米の経済制裁のためにロシア経済の先行きは益々不透明になっている。
馬場君は「日本とロシアの協力関係は将来、必ず大きく実を結ぶ時が来る」と何時も言っていた。
彼ほどロシア貿易に信念と使命感を持っていた商社マンは居なかった。我々のロシアビジネスが
飛躍的に発展した時期は過去に3回あった。1回目は旧ソ連の崩壊の時期である。
2回目は98年の金融危機の時期で、3回目がリーマンショックの直後であった。
私は資源大国ロシアが多重苦に喘いでいる今こそ、友好国として手を差し伸べ、
日露の協力関係を築き上げる時だと思う。それこそ、北方領土四島一括返還の最後のチャンスだ。
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