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★【原発仮処分の衝撃(上)】「新規制基準まで否定…」高浜再稼働シナリオ狂い、関電の再々値上げも
2015.4.15 07:00
「新規制基準まで否定されてはどうしようもない」
14日午後2時すぎ、福井地裁の樋口英明裁判長が関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の
運転差し止めの仮処分を言い渡した後、報告を受けた関電幹部は表情をこわばらせた。
東京電力福島第1原発事故後、司法が原発の運転差し止めを妥当としたのは2例目。
前回は昨年5月に福井地裁が関電大飯原発3、4号機(同)の運転差し止めを命じた民事判決だ。
いずれも担当は樋口裁判長で、今回は高浜について「万が一の危険という領域をはるかに超えている」
と指摘した。原子力規制委員会が安全を確認した原発から順次稼働するとの政府方針に真っ向から
対立しただけでなく「新規制基準は緩やかに過ぎ、合理性を欠く」とまで言い切った。
これで手続きが最終局面に入っていた高浜の再稼働が暗礁に乗り上げ、
産業界には「ゼロリスクをいわれたら飛行機も電車も動かせない」との声が上がる。
ただ、昨年5月の民事判決と同じ判断とはいえ、関電にとっては今回の仮処分は格段に重い意味を持つ。
大飯の判決は控訴や上告のあった場合、確定まで法的効力が発生しない内容だったため
昨年5月の判決は関電が控訴した時点で実質的に効力を失った。だが差し迫った事態に対応する
仮処分決定は、判断が覆るまで効力を持つため関電は新たな審理で勝つまで高浜を稼働できない。
「樋口裁判長による審理を狙ったとみられる申立人の戦略に関電が完敗した」。民事訴訟に詳しい
冨宅恵弁護士(大阪弁護士会)は分析する。同様の仮処分の申し立ては昨年11月に大津地裁では
却下された。その8日後、大飯の運転差し止め判決を出した福井地裁にあえて申し立てたのだ。
関電は平成25年7月、規制委に高浜2基と大飯2基の安全審査を申請し、いずれも半年程度で
合格するとみていた。ところが地震対策の前提となる基準地震動(想定される最大の揺れ)の
算定基準をめぐり規制委と見解が対立したまま審査が長期化した。結局、高浜が新規制基準に
適合すると認められたのは今年2月。当初見込みの3倍の時間を要し九州電力川内原
発1、2号機(鹿児島県)の合格から約5カ月がたっていた。
関電は、その後の関係書類の作成では「生まれ変わったよう」(大手電力関係者)に姿勢を転換。
九電から規制委のやり取りを徹底して収集し作業に反映させた。すでに9万ページ近い書類を提出し、
手続きも大詰めに入っていた。関電幹部は「ここにきて司法に阻まれるとは」と言葉を失った。
「27年度も再稼働が難しくなっても再々値上げはないでしょうね」。1月、経済産業省。
関電の震災後2度目の電気料金の値上げを審査する有識者会議で、ある委員が関電の八木誠社長に
こう詰め寄った。
「訴訟などの理由で(原発停止が)長期化すると総合的な判断が必要」。
八木社長は将来的な再々値上げを完全否定できなかった。
関電は25年春に震災後初めて電気料金を値上げし、家庭用で平均9・75%引き上げた。
今回は家庭用で同10・23%の値上げを申請。単純合算で2年で20%もの電気料金の上昇だ。
企業用は計約34%上がり、電気料金の負担増が市民生活や企業経営を圧迫し続ける。
関電は再稼働の遅れに伴い悪化する財務基盤を再値上げで改善する考えだ。火力発電所の燃料費増加
などで27年3月期の連結最終損益は1610億円の赤字の見通しだ。4年連続の最終赤字で、
5年連続になると会社を丸ごと売っても借金を返せない債務超過が現実味を帯びる。
関電は、再値上げをした上で11月に高浜を再稼働すれば、赤字は回避できると想定していた。
だが、仮処分に対する異議申し立ての審理は1年近くかかる恐れもあり、関電のシナリオを狂わせていく。
再稼働が想定以上に遅れれば、火力発電所などの修繕費の削減まで迫られかねず、
「赤字回避には火力などの安全面を多少犠牲にするくらいしないと、うちは終わる」。
関電首脳の言葉に悲壮感が漂う。
URLリンク(www.sankei.com)