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★日本の魅力再発見ブーム…底流にあるのは?
2015年04月12日 08時25分
外国人を登場させたりして日本の魅力を再発見しようとするテレビ番組や出版物が目立っている。
このブームをどう捉えるべきか。ナショナリズムと結びつく動きなのか。萱野稔人・津田塾大教授、
先崎彰容・東日本国際大教授の見方を聞いた。
・テレビや本が魅力を紹介
テレビ番組では、「所さんのニッポンの出番!」(TBS)、「クイズ!それマジ!?ニッポン」
(フジ)など“日本モノ”が大はやり。ブームの元祖ともいえるのは「YOUは何しに日本へ?」
(テレビ東京)だ。来日外国人に空港で声をかけ、時には密着取材し、日本の魅力を再発見する。
視聴者の支持を集め、特番から深夜レギュラー番組、さらにゴールデンタイムへ昇格してきた。
番組企画は、中国人の“爆買い”現象をきっかけに生まれた、と村上徹夫プロデューサーは明かす。
また、「分かりやすい日本賛美の番組も多い」として、「自分たちは日本の良さを押しつけ
るつもりはなく、外国の方と一緒に日本のいい面も悪い面も見て、結果としての再発見を
切り取りたい」と強調している。
出版物では、小学館『にっぽんの図鑑』=写真=の売れ行きも好調だ。2月末に刊行された、
子供向け図鑑「プレNEO」シリーズの最新刊。
1冊で自国文化がまるごと分かる本として、あいさつから食生活、遊び、風呂、祭り、伝統芸能、
風習、妖怪まで、図や写真を多用して紹介する。同社生活編集部の青山明子編集長は、
「日本というキーワードがざわざわしている印象があった」と企画意図を振り返る。
高度成長期以降に育った大人が、生活文化を次世代に継承できていないとも感じたといい、
自身も「改めて日本文化の奥深さを感じた」と語る。
新書でも、日本を褒めるタイトルが目立つ。オリコンの2014年売り上げランキングでは、
100位以内に、川口マーン惠美著『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』、
竹田恒泰著『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』などが入っている。
■無邪気な自画自賛…萱野稔人・津田塾大教授
政府は来日外国人旅行者数1000万人を目標にしていたが、2013年、いとも簡単に超えてしまった。
日本人はその事実に驚き、外国人が自らの社会や文化に興味を持ってくれたと喜んでいる。
そして「日本のどこに魅力があるのか」と確認し、自己を肯定しようとしている。
ブームの背景にあるのは、そんな心理状態だろう。
自己を肯定したい気持ちは根本的なもので、個人にも国にも、普遍的に存在する。私もフランス
8年間住んだが、食べ物や治安、清潔さなど、比較するなら圧倒的に日本が住みやすく、肯定したいと思う。
外国人旅行者の増加といううれしいニュースに接し、自画自賛したくなるのは無邪気な感情で、
目くじらを立てる必要はまったくない。
その気持ちを、危険なナショナリズムの兆候だと批判する知識人もいる。彼らは小さな芽の段階で、
それを摘もうとするが、正面から批判すればするほど、素朴な感情は追いつめられ、抑圧される。
その結果、攻撃的で、強烈な他者への批判に転化しかねない。不毛で逆効果だ。
さらに、批判する側には、「自分は、日本を自画自賛するような価値観を超越している人間だ」
という、ゆがんだ自己肯定があるように感じる。このように自己肯定の気持ちは知識人も
乗り越えられない。批判する欺瞞ぎまんに気づいた方がいい。
多くの人は「日本が優れているから、他国の上に立つべきだ」などとは思っておらず、節度がある。
もちろん自画自賛がエスカレートしていく可能性もあるが、頭ごなしに否定するのでなく、
むしろ自らの国の価値を特別視したい気持ちは肯定した上で、どうしたら暴走しないかを
考えていくべきではないか。
自己肯定の感情は、どこの国の、誰にでもあると認めることが出発点だ。
そして、中国や韓国などとの外交問題を抱える中、互いに心地いい状態をどう作っていけばいいのか、
長期的に得をするにはどうすればいいかを考えていくべきだ。
この過程は個人でも、子どもから大人になる際に通る道と言える。日本という国も今、
成熟する過程にいるのではないだろうか。
◇1970年生まれ。専門は哲学。著書に『国家とはなにか』『ナショナリズムは悪なのか』など。
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