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★【正論】看過できない政治家の国際感覚 新潟県立大学教授・袴田茂樹
2015.3.18 05:02
3月初めにロシアで、日露の専門家や政治家がウクライナ問題や日露関係をめぐる非公開の
会議を行った。私の最大の関心は、本欄で先月私が書いた見解に対するロシア人の率直な意見を
聴くことだった。「日露の歴史を修正しているのはロシア側」という論だが、以下が私の見解の要点である。
・「歴史修正」認めたロシア高官
(1)プーチン大統領も含めロシア政府は、北方領土の帰属問題が未決と認めて領土交渉を
続けてきたのに、2005年以来「第二次大戦の結果ロシア領と決まった」と主張し始めた
(2)ロシアは軍国主義日本がナチスドイツと同盟を組んで、ソ連が被害者になったかの
如(ごと)く非難するが、日本は独ソ戦の間も含め「日ソ中立条約」を最後まで守り、
それが独ソ戦でのソ連勝利の一因だった。条約を破って日本を攻撃し大西洋憲章の精神に
反して領土を拡大したのはソ連だ。
この私の見解に対しては、エリツィン時代にロシア政府高官として日本との領土交渉に直接携わり、
交渉経緯を知悉(ちしつ)している人物が、私の見解に完全に同意すると述べた。
私は、真実を知っている者は、ロシア人でも私の見解を否定できないと密(ひそ)かな確信を
抱いていたので、彼の言葉に得心した。
3月10日にモスクワの国際大学で講演をした。その時もやはり、本欄で書いた見解に対する
ロシア人学生や教授たちの反応を知るのが私の主たる目的だった。
「日本は政治・経済的にあまり関係のないウクライナ問題で対露制裁に加わっているが、
これは単にG7への同調、米国の圧力故ではないか。日本はもっと主体的な対露政策を遂行すべし」
との対日批判をまず紹介すると、100人余りの聴衆の殆(ほとん)どがこの見解に賛成した。
次いで私は、クリミアとスコットランドの住民投票が、ロシア軍の軍事介入がなかったとしても
本質的に異なり、クリミアのロシアへの併合は国際法的に認められないことを、世界各地の
「チャイナタウンでの住民投票」を例に出して説明した。その国の政府が認めない「自決権」
は国際法的に無効という見解だ。ロシア軍介入下での併合はもちろん論外だ。
・鳩山元首相への痛烈な質問
「日本とウクライナは今やロシアに主権、領土保全を侵されているという共通問題を抱えている。
従ってG7の中では日本は他国以上にロシアの主権侵害を批判する権利と義務を有する」との
私見を述べた。そして「領土問題ではロシアに別の見解があることは承知だが、日本の立場から
するとロシアの対ウクライナ政策を厳しく批判せざるを得ない。それはG7への配慮故だけではない」
として、緊張する尖閣問題も説明した。
この説明のあと聴衆の意見を求めた。驚いたことに、直前に紹介した対日批判に賛成した者の
殆どが、今度は私の見解は理解できると挙手したのである。
私がモスクワの講演で最も強調したのは、21世紀のグローバル化の時代になっても世界の秩序は
主権国家間の関係で辛うじて維持されており、国民国家とか主権・領土という観念は過去のものに
なるというポストモダニズムの政治論はあまりに楽観的で、安定した主権国家の存在と他国の
主権尊重が最も重要、という点である。
この私の見解に対して、痛烈な質問が出された。聴衆の一人が、「日本がロシアによるクリミア併合を
ウクライナの主権侵害と批判するのは理解できた。では、鳩山由紀夫元首相が本日クリミアを訪問して
住民投票によるロシアへの併合を認めたことをマスコミは広く報じている。これをどう理解すべきか」
と質問したのだ。ロシア査証でクリミアを訪問した彼の行動は、私自身絶句する事態で心底から赤面した。
あらかじめこの質問は予想していたのだが、次のように答えざるを得なかった。 >>2へ続く
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