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★【世界を斬る】ぎくしゃくする米英関係 オバマ政権がチャーチル胸像を倉庫に…
2015.03.18
ホワイトハウスを埋めていた雪が消え、ポトマック川を覆っていた氷も溶けて、
ワシントンは三寒四温の日々が続いている。世界的に有名なワシントンの桜のつぼみもふくらんできた。
「ポトマック河畔の桜が咲き始めるのは20日頃になる。今月から、来月初めまで満開の桜を楽しむことができる」
テレビのモーニングショーのキャスターがこう伝えた後、次のように付け加えた。
「ポトマックの桜は、100年ほど前、日本から太平洋を越えてはるばる贈られてきた。
贈り主である当時の東京市長オザキ(尾崎行雄)は、日本と米国の関係にとって重要な人物といえる」
米国のモーニングショーが、桜の開花時期だけでなく、歴史まで伝えるのは珍しいなと
耳にとまった。同時に、かつて米海軍の老提督が私に言った言葉を思い出した。
折しも桜が満開の頃、ペンタゴンから14号線を通り、ホワイトハウスまで米海軍の
車で送ってもらっている途中、この海軍提督が私に言った。
「第2次大戦中はまだペンタゴンがなく、その先に海軍と海兵隊の小さな事務所があって、
この道を通ってホワイトハウス通いをした。戦争の最中で、日本については好ましくない
話ばかりだったが、満開の桜を見ると、日本海軍の友人らの顔を思い出したものだ」
政治家は100年の計を考えなければならないと言う。明治という日本が豊かでなかった時代、
6000本を超える桜の苗木を横浜港から貨物船で米国まで贈り届けた当時の尾崎市長の
気宇の大きさが、この100年、時に対立する日米関係に好ましい影響を与え続けてきたことは確かだ。
国家間の贈り物については、長い将来を考えるべきであり、
そして注意深く扱うべきであることを教えてくれるもう一つのエピソードがある。
43代のジョージ・W・ブッシュ大統領が就任してすぐ、イギリスのブレア首相(当時)は
イギリスの名宰相チャーチルの胸像を送った。チャーチルは、米国のルーズベルト大統領と
ともに第2次大戦を戦い抜いた両国にとっての英雄だ。チャーチルの胸像は、
米英友好の象徴としてホワイトハウスの大統領執務室に飾られた。
ところが、ブッシュ氏のあとに登場したオバマ大統領は、イギリスの植民地政策がアフリカを搾取し、
アフリカの人々を苦しめたと非難。チャーチルの胸像を執務室から放りだして、倉庫に入れてしまった。
保守系の大物政治家は私にこう言った。
「オバマ政権のもとで米英関係がぎくしゃくしていることや、イギリスがロシアのプーチン大統領の
ウクライナ侵略をめぐる米国の対ロシア政策に協力しようとしないことには、チャーチルの胸像がからんでいる」
善意の贈り物が、今や米国とイギリスの対立の原因の一つになっているのである。
■日高義樹(ひだか・よしき) 1935年、名古屋市生まれ。東京大学英文科卒。
59年NHKに入局し、ワシントン支局長、理事待遇アメリカ総局長を歴任。退職後、
ハーバード大学客員教授・同大諮問委員を経て、現在はハドソン研究所首席研究員、
全米商工会議所会長顧問。
URLリンク(www.zakzak.co.jp)