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★中国から撤退したい日本企業を悩ませる問題 人件費高騰、解雇時の補償金
2015.03.15 連載:大前研一のニュース時評
今年1月に実施した内閣府の上場企業アンケートによると、2013年度の製造業の海外現地生産
比率は前年度より1・7ポイント高い22・3%となり、1986年度以降で過去最高を更新した。
14年度は22・9%、19年度は26・2%に上昇すると見込んでいる。
また、海外現地生産を行う製造業の割合も、13年度は71・6%と前年度より1・8ポイント上昇。
14年度は71・9%、19年度は73%まで高まる見通しだ。実に4社に3社までが海外生産をする、
という予測だ。
「円安になったら、企業の工場は日本に戻ってくるのではないか」と言われていたが、
海外生産の拡大傾向は続いているということだ。現地や周辺国の需要の大きさ、
労働力コストの低さなどを理由に挙げる企業が多い。
そんな状況で、中国に進出した製造業の中には新興国に生産拠点を移そうとするところも出てきている。
私の経験でも、中国ではここ10年の間に人件費が5倍ぐらい上がっており、さすがに中国を生産拠点
にするのは難しいところまできていると思う。
しかし、中国から撤退したい企業を悩ませる問題も生じている。
この2月、中国・広州にある時計製造大手シチズン・グループの子会社が工場の閉鎖を行ったが、
約1000人の従業員に解雇が通告されたのが生産ラインを止める当日。しかも会社解散の
前日だったことから、従業員が抗議して大きな騒動になった。
中国では通常の解雇は1カ月前の通知が義務づけられているが、会社解散の場合は通知義務がない。
シチズン側は「役所ときちんと相談して行った措置で、法律的に何の問題もない」としていたが、
批判的な報道が続いて、結局、解雇時に支払う補償金を上積みすることになった。
また、東芝も13年末に大連の液晶テレビ工場を閉鎖したとき、解雇する従業員約900人の
再就職先を斡旋したという。こうしたことはアメリカなどではやってきたが、中国では季節変動に
応じて採用と解雇を繰り返すなど、少なくとも10年以上前までは普通に行われてきたことを
考えると隔世の感だ。
各企業が中国から撤退するのは、人件費の高騰などで採算が取れなくなったからだが、
撤退するには、従業員への追加の給与や補償金、役所に対する根回しなど想定外の経費がかかる
ということだ。また、従業員の権利意識の芽生えもめざましく、不当解雇、と誤解されたら一人
ずつが弁護士を連れて訴えてくる。中国でもっとも急激に伸びている職業は弁護士だ、
という冗談が語られているが、大連で会社を経営している私の立場では笑えない。
中国進出の日本企業に「今後も中国で事業を拡大するか?」と聞くと、かつては3分の2が
「イエス」と答えていたが、現在では半数以下だ。「実は縮小したい」という企業も多いし、
巨大市場は魅力があるが輸出拠点としてはあまり先行きが明るくない。
しかし、だからといって、ベトナムなどに移転しようと考えている企業は意外に少ない。
ベトナムも人件費は上がっているし、中国で行っている事業全体を受け入れてくれるだけの
労働人口もない。中国並みの広さと雇用人口を持つ国というのは世界にはない。
とりあえず、労働集約型の産業はバングラデッシュなどに逃げているが、インドも含めて、
やはり製造業に適した人材、産業インフラなどを見れば中国にはかなわない。なんとも悩ましいところだ。
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