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★【複眼ジャーナル@NYC】「移民の国」の皮肉 米国で進む「国籍放棄」、企業も個人も重税逃れ 米政府は黙っておらず…
2015.3.14 12:00
先週、米南部ヒューストン市が大ニュースに揺れた。同市を代表する医療機器メーカーの
米サイバロニクスが、見知らぬ名前の欧州企業と合併するのだという。
お相手は、イタリア北部の工業都市ミラノを本拠地とする、同業の伊ソーリン。
合併後の新会社は本拠地を英国に移し、英国企業としてロンドン取引所に上場する。
企業にとって、合併は「結婚」に等しく、本件で「求婚」したのは、サイバロニクス。
「国籍」を捨ててまで「国際結婚」に走ったサイバロニクスに、何の魂胆があるのか?
答えは、税金である。サイバロニクスは、利益の30%以上を支払っていた米国の
法人税に嫌気が差した。移転する英国の法人税は20%程度にすぎない。
最近では薬局チェーンや製薬会社が似たような欧州企業買収を決めており、節税を理由に、
米国企業が国外脱出する例が増えている。自由主義の印象が強い米国だが、
法人税率が経済協力開発機構(OECD)加盟国で最高水準という「重税大国」なのだ。
サイバロニクスとソーリンの合併発表のあと、マンハッタンのとある大手法律事務所内では、
弁護士と税理士が秘密の会合を開いていた。会合での発言は引用不可、という厳しい情報管理である。
議題は、日本語で「倒錯」を意味する「インバージョン」。税率の低い国の海外企業と
合併・買収して法人登録地を変えることで、米国政府からの課税を回避する手法の研究会である。
通常、合併・買収を「求婚」した企業の本拠地に「花嫁」企業が移転するものだが、
「インバージョン」では逆である。
同会合では、サイバロニクスの例も紹介され、「『インバージョン』の需要は引き続き強い」
という結論に達した。米国企業の多国籍化が進んでいるが、海外でためた利益を米国に還流させ
ると高い税率が適用される。だったら、外国企業になって海外で投資した方が得なのだ。
もちろん、徴税の機会を逃したくない米政府は、黙っていない。2014年秋に米財務省が
「インバージョン」を困難にする通達を出した。
だが、本来ならば課税対象となる米国内での販売比率が下がるような合併や資本調達を
弁護士と税理士が編み出した。同通達後もサイバロニクスを含めて3件ほどの
「インバージョン」が発表されている。
実は、脱・米国の機運が高まっているのは、企業の間だけではない。個人もである。
14年は、3415人の米国人が自国籍を捨てた。これは史上最高の数字で、
過去10年間でなんと5倍増である。
これも税金が原因。直接の引き金を引いたのが、10年に成立した外国口座税務コンプライアンス法だった。
海外の銀行に一定額以上を預けている納税者に対して、同口座の報告義務を課したため、
富裕層が欧州などに逃げ出した。
「移民の国」なのに、企業も個人も記録的な国外脱出とは…。ちなみに、多くの「インバージョン」
を手がけた米法律事務所が14年の業界売り上げトップ。米政府は国籍破棄の手数料を従来の5倍の価格に引き上げた。
URLリンク(www.sankei.com)