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★レノボのマルウェア問題が提起するハードの奥深くに潜むセキュリティリスク
瀧口範子 [ジャーナリスト] 2015年2月26日
・米国ではすでに訴訟問題に発展
中国のPC メーカー、レノボの製品に広告を表示するソフトがあらかじめ搭載されており、
それがセキュリティー上脆弱だったという問題は、案の定アメリカで訴訟問題に発展しつつある。
すでに、自分のパソコンにダメージをもたらし、プライバシーを侵害したと訴えているカリフォルニアの
女性ブロガーがおり、またニューヨークでは、弁護士事務所が集団訴訟の原告に加わりたいユーザーを求めている。
大手企業相手が起こした問題だけに、巨額の賠償金をあてにした訴訟国の歯車が回り始めたという感じだ。
それにしても、この問題が発覚したことで、今や汎用製品になったパソコンの裏舞台では知らないことが
たくさん起こっているというのがわかった。
ひとつは、もちろん今回最も問題視されている、ハードウェアに広告関連のソフトを組み込むという動きだ。
パソコンやスマートフォンなどのハードウェア製品は、それ自体では機能だけを搭載したニュートラルな
存在だと消費者は信じていたわけだが、決してそうではないということである。
今回は、「スーパーフィッシュ（SUPERFISH）」という、イスラエル出身で現在はシリコンバレー
企業のソフトウェアがバンドル化されていた。
同社のソフトはビジュアル検索と呼ばれる機能を持つが、これは見たところ似たようなものを検索する技術だ。
たとえば、あるショッピングサイトで茶色のソファを探していたとすると、他のショッピング・サイトからも
同じような商品の画像を探し出してきてスクリーンに表示するしくみだ。
これがあると、ユーザーが商品を効率的に探し出せるというのが謳い文句。だが、何のことはない。
これは広告をたくさん表示させることで、レノボにとっての収入になっていたわけだ。
レノボとスーパーフィッシュとの契約により、スーパーフィッシュ側にも何らかの売上があった可能性もある。
・開封時からユーザーの追跡を開始するＰＣ
最近は、インターネット接続によってブラウザーやサイト上での行動がモニターされ、それに応じて
ユーザーのプロフィールが構築されたり、買いそうな商品の広告が表示されたりといったことが起こっている。
そして、それがプライバシーの侵害だとして取り上げられているのは、周知のことだ。
しかし、インターネットなどと言わなくても、すでに手元のハードウェア製品にそんなしかけが
施されていたとは、まるでスパイ行為も同然という声も出ている。
問題をさらに大きくしたのは、そのソフトにセキュリティーを脆弱にする要素が含まれていたことだ。
ユーザーを偽のサイトへ誘導して、サイバー犯罪者が銀行口座のパスワードを盗み出したりすることが
可能になっていた。
スーパーフィッシュの言い分によると、その脆弱性は意図したものではなく、スーパーフィッシュの
ソフトの中に含まれていたサードパーティ（別の企業）のツールのせいと言うことだ。
そのサードパーティとは、イスラエル企業の「コモディア」である。
ソフトの中に、他社の作ったプログラムが入っており、そこでの脆弱性が未チェックのまま製品化
されてしまう。しかも今回は、それがハードウェア製品の中の広告表示ソフトという、妙ななりゆき。
そのとばっちりを受けたのは、何も知らない消費者というわけだ。
だが素人には、まだまだわからないことがたくさんある。
実は、インターネットに接続されているならば、もはやハードウェアとソフトウェアの区別は危ういもの
と言える。インターネットで行われているようなユーザーのモニターが、ハードウェアで行われることを
くい止めるのに十分な力がわれわれにあるのだろうかという点。
そして、こうした広告に関連したソフトウェアをハードウェア製品にバンドル（同梱）しているのは、
果たしてレノボだけなのだろうかという疑問。ひょっとすると知らないうちに、業界の標準になって
いるのではないのだろうか。
今回の事件は、消費者が知らないうちに種々のテクノロジーがどんどん交錯して、
わかりにくくなっていることを感じさせた。
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