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★イスラム国ではなく「ダーイシュ」、弱点を突いて解体せよ
元バアス党員と元イラク軍人たちが夢想した世界とは
2015.02.06(金)松本太
私たちの同胞が殺された今、我々はもはや塹壕に篭もっていてはならない。
彼らの脅威から目を背けることは、次の犠牲を生むことになるからだ。目を見開いて、敵を見据えること。
彼らのことを「イスラム国」ともはや呼ぶ必要はないだろう。
「イラクとシャームのイスラム国」のアラビア語の略称である「ダーイシュ」
(al-Dawlaal-Islamiyafial-Iraqwaal-Sham)と呼び捨てにすることだ。
この2月4日早朝に、ムアズ・カサスベ空軍パイロットの残虐な殺戮に怒りを押し殺した
アブドゥッラー国王が、ヨルダン国民を前にしてテレビでそう呼び捨てたように。
なぜなら、そうした共通の認識をとることこそが、「ダーイシュ」が確信的に築き上げ、
不要に膨張した彼らの共同幻想を打ち砕くことになるからだ。こうして、不幸な事件が
連続する中で、ヨルダン国民と私たちは1つになる。
筆者は、すでにイスラム主義との戦いは、そのイデオロギーとの戦いにあると述べた。
(「本当に撃退すべきなのはイスラム国の暴力ではなくイデオロギーだイスラム国という疫病への処方箋」)。
今ここで改めて、彼らのイデオロギーとその戦略を一枚一枚剥がしていく必要がある。
本稿では、わずか12年弱ほどのイラク戦争後の戦後史を明らかにしつつ、ダーイシュの真の姿
=その組織、戦略、そして戦術を皆さんと共有したい。そうすることによって、彼らが一体いかなる
組織なのか、彼らの行き着く先がどこなのか、白日の下にさらされるだろう。
これはダーイシュという幻の脱構築であり、その誤った認識論的な存在に終止符を打つことである。
・イラク元政権関係者が築きあげた「ダーイシュ」
ダーイシュは実にイラク的なのだ。この認識を持つことが始まりとなる。
彼らは、イラクという大地から生まれた過激派組織なのだ。
その秘密結社的な紐帯、そして、極度の残虐性。いずれもイラクという土壌を抜きにしては語れない。
そして、ダーイシュを成立させしめたのは、イラク南部にあった米軍キャンプ「キャンプ・ブッカ」の
拘置所であったことを決して忘れてはならない。拘置所において、旧バアス党や旧イラク軍の関係者が
イスラム主義の過激なイデオロギーに目覚めていくのだ。
それは彼らが心底からイスラム主義に感化されたというよりは、むしろ、そのあまりの実利に気が
ついたといった方がより的確なのかもしれない。その隠された歴史はいまだよく記述されていない。
しかし、私たちは、それがいかなるものであったのか、想像することはできる。
イラク戦争後、自らが権勢をふるったかつての国家と社会から、身ぐるみを剥がされるように
追い出されたイラクのスンニ派の前政権関係者たちは、根なし草となった。いかに、戦後を生き抜くか。
この大きな悩みこそが、彼らをイスラム主義の過激な思想に近づけることになる。
自称カリフのアブ・バクル・アルバグダーディをはじめとして、現在の「ダーイシュ」の幹部の
相当数が実際にキャンプ・ブッカの出身者なのである。この点で、最近公表された元MI6の
プロフェッショナル、ロバート・バレットによる「イスラム国」と名付けられた詳細な分析は、
巷で出版されている凡百の解説書や断片的な新聞記事をその明晰さにおいてはるかに凌いでいる。
彼らは、幸いにも拘置所や刑務所に入れられたがために、米軍とイラク治安軍、そしてイラクの
部族からなる覚醒評議会による徹底的な攻撃(サージ)を生き延びることができた。その間に当時の
「イラクのイスラム国」が、その幹部を立て続けに失った結果、拘置所にいた人々がその穴を埋め、
世代交代が起きるのである。(以下略)
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