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★「いざとなれば逃げる」記事が広めた不信感 福岡
2014.9.12 07:02
「電力会社の人間は、いざとなったら逃げる。そんな印象を与え、原発や電力会社への不安を
かき立てる記事でした。再稼働には間違いなく逆風ですよ」
東京電力福島第1原発事故の吉田調書をめぐる報道で、朝日新聞が誤りを認めたことに対し、
九州の電力事業関係者はこう感想を述べた。
朝日は5月20日付の新聞で吉田調書に関する記事を掲載した。「所長命令に違反 原発撤退」と
見出しを掲げ「第一原発にいた所員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、
10キロ南の福島第二原発へ撤退していた。その後、放射線量は急上昇しており、事故対応が
不十分になった可能性がある」と報じた。
掲載当時、九州電力川内原発は、原子力規制委員会の安全審査において「優先枠」に入り、
再稼働候補の一番手となることが決まっていた。
だが、安全審査の見通しは立たず、反原発団体を中心に、再稼働への逆風は強まっていた。
記事掲載翌日の5月21日には、福井地裁(樋口英明裁判長)が「万が一でも危険性があれば
差し止めは当然」として、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を認めない判決を言い渡した。
川内原発がある鹿児島県では6月13日、反原発団体が集結し、再稼働反対の集会を開催した。
こうした反原発団体にとって、朝日の記事が運動の高まりに一役買ったことは、間違いない。
「おなじみ、木村英昭記者のスクープです」
福島第1原発事故に関し、東京電力取締役の個人責任を追及するという、非営利団体
「東電株主代表訴訟」のフェイスブックでは、5月20日付の記事を、記者の名前入りでこう紹介していた。
九電に対し、朝日の記事を基にした抗議などは、目立っては寄せられていないという。
しかし、「福島のヒーローは、実は怖くて逃げていた」という風評は国内外に広まってしまった。
外国の有力メディアは、朝日の記事を引用し、相次いで報道した。韓国のセウォル号事故と同一視し、
「有事に逃げ出した作業員」とする報道もあった。
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は5月20日、「朝日新聞によると」という形で、
「パニックになった作業員が福島第1原発から逃げ出した」と報じた。
朝日新聞が誤りを認め、訂正したとしても、記事が広めた原発や電力会社への不信感が消え去る
ことはない。加えて、原発事故という極限下で、命を顧みずに困難に立ち向かった日本人の精神と
行動を、国内外で貶(おとし)め続けており、その罪は重い。(小路克明)
URLリンク(sankei.jp.msn.com)