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★「東電社員、事故原発から逃亡」?朝日報道への疑問
石井 孝明 2014年08月26日00:01
◆調書のニュース価値は大きいのか?
政府は政府事故調査委員会が作成した吉田調書を今年9月までに公開する方針という。東京電力福島第一原発事故で、
同所所長だった故・吉田昌郎(まさお)氏が、同委に話した約20時間分の証言をまとめたものだ。
吉田氏は食道がんで昨年亡くなったが生前に調書を公開しないことを求めていた。(内閣府への吉田氏上申書)
ところが朝日新聞が今年5月に、また産経新聞が8月、吉田調書を報道。そのために公開を求める声が広がっていた。
A4で400ページにもなるという。
朝日、産経の両新聞はスクープと自賛し、調書の解説記事を大きく報道した。しかし筆者は騒ぎに首を傾げる。
「吉田調書」は重要ではあるものの、両社の喧伝するほど意味のある文章ではないと思う。
これは政府事故調査報告書をまとめるための材料だ。両新聞の記事を読む限りにおいて、吉田調書の重要な
事実の部分は報告書にだいたい織り込まれている。(「政府事故調ホームページ」)同報告書は一般には
あまり読まれていないが、とても参考になり、事故の概要はだいたい分かる。報道で一番重要なことを
「事実」とすれば、この調書の重要な事実は、すでに世に出ているのだ。
ただし調書をめぐる記事は大変印象深い。公式な報告書にはない吉田氏の感情が表現されているためだ。
筆者は生前の吉田氏に会っていないが「べらんめえ」調で話し、堂々とした人だったという。吉
田氏は事故で全電源が喪失したときの絶望、不適切な指示を出した東電本店への不信、無意味な介入を
続ける政府への怒りを示している。
◆朝日、産経の批判合戦「東電社員は逃げたか?」
この報道で、興味深い点がある。朝日と産経の伝えた記事の焦点が同一文書を根拠にしたと思えないほど違う点だ。
朝日新聞の5月20日記事『福島第一の原発所員、命令違反し撤退 吉田調書で判明』を要約してみると
「吉田氏の命令は、第一原発構内での待機だったのに、所員は10キロ離れた第二原発に撤退している。
これは命令違反行為であり、東電の社員は現場から逃げた」というものだ。
産経新聞の8月18日記事『吉田所長、「全面撤退」明確に否定 福島第1原発事故』を要約してみると
「東電社員は、吉田氏の指示に基づいて事故直後に踏みとどまった。第二原発に行ったのは退避をすべしという吉
田氏の命令によるもの。朝日の報道は間違い」というものだ。
吉田氏に取材していたジャーナリストの門田隆将氏は産経への8 月18日の寄稿で『朝日新聞は事実を曲げてまで
日本人をおとしめたいのか』という批判文章を発表した。
また朝日の記事では原発事故の危険性が繰り返されている。そして事故収拾で混乱を招いたと批判を受けた
民主党の菅直人首相(当時)、福山哲郎、細野豪志、寺田学の3首相補佐官(当時)がインタビュー、
連載に協力。福山氏の調書なども公表された。
一方で産経記事は危機に命をかけて立ち向かったという吉田氏を賞賛。そして吉田氏は民主党の政治家が現場に
介入したことを怒っていた。産経8月18日記事『「あのおっさんに発言する権利があるんですか」吉田所長、
菅元首相に強い憤り』などだ。
一方で朝日は産経の報道に抗議文書を送り、両社は対立している。(『産経記事巡り朝日新聞社が抗議書「吉田調書」報道』)
>>2へ続く
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