14/07/07 00:16:10.18 0.net
集団的自衛権行使容認の閣議決定(1日)を受け、2日付新聞各紙には大見出しが躍った。なかでも産経は「『積極的平和』へ大転換」
という大見出しでその歴史的意義を強調。中見出しで「今後50年日本は安全だ」という首相発言を掲げた。対照的に朝日は1面で
「9条崩す解釈改憲」、2面で「ねじ曲げられた憲法解釈」、3面で「危険はらむ軍事優先」という見出しを打ち、日本が戦争に巻き込まれる
危険性を警告した。
産経は集団的自衛権行使容認によって戦後日本の国の守りがあるべき国家の姿に近づいたと評価。政治家も国民も共に考え、
日本がより主体性をもって判断すべき時代を迎えたという(同主張)。朝日は戦後日本が築いてきた民主主義が踏みにじられるとの
懸念を示した。この政権の暴挙をはね返すには国会論戦だけでなく、メディアを含めた草の根の異議申し立てが必要だとした(同社説)。
こうした両紙論調のコントラストはこれが初めてではない。慰安婦問題の「河野談話」を検証した政府報告書(6月20日公表)でも
顕著だ。産経は河野談話が「日韓合作」だったという特ダネをすでに報じていただけに「根拠のない談話により日本の名誉は著しく
傷つけられている。談話は破棄、撤回を含め見直さなければならない」と断じた(同21日付主張)。一方、朝日はもともとこの問題の
火元と目されているせいか、元慰安婦たちの救済を重視すると同時に、韓国政府の猛反発を懸念。「もう談話に疑義をはさむのは
やめるべきだ」(同社説)と幕引きを主張している。
集団的自衛権や河野談話について両紙の論調に違いがあることは別に問題ではない。それぞれ社の方針に沿った主張があっていい。
その違いが安倍晋三首相の政治信条や国家観に対する評価の違い、ないしは日米同盟、日中韓関係に対する評価の違いに起因して
いることは間違いない。
保守を自任する産経がナショナリストと評される安倍首相の肩を持ち、中国の東アジア地域での急台頭を牽制(けんせい)する
日米同盟強化を支持するのは当然だ。逆にリベラルを自任する朝日が安倍首相の「戦後レジームの転換」を批判、どちらかといえば
反米、親中に傾くのも不思議ではない。両紙論調が併存していることはむしろ日本の言論界の健全性を物語るともいえよう。
いま日本の言論界に求められているのはその健全性よりも平和国家日本のビジョンを語ることだ。歴史の教訓を踏まえ過去の過ちを
繰り返すことなく未来志向の展望を切り開くことだ。戦争の危険性をいくら論じたところで戦争は防げない。戦争をいかにして防ぐか。
その知恵を絞るのに保守もリベラルもない。
◇
【プロフィル】伊豆村房一
いずむら・ふさかず 昭和16年東京生まれ。慶大経卒。元東洋経済新報社取締役編集局長。
ソース(MSN産経ニュース) URLリンク(sankei.jp.msn.com)